内容説明
十五歳の少年イーストは生まれて初めてLAを出た。これから人を殺しに行くのだ。標的の裏切り者は遠く離れたウィスコンシンに旅行中で、法廷に立つため来週戻ってくる。その前に始末しろという所属組織の命令だった。イーストに同行するのは、殺し屋である不仲の弟をはじめとした少年たち。崩壊の予感と軋轢を抱えながら、二〇〇〇マイルに及ぶ長い旅が始まる。孤独なる魂の彷徨を描いて絶賛を浴びたクライム・ノヴェル。
著者等紹介
ビバリー,ビル[ビバリー,ビル] [Beverly,Bill]
1965年アメリカ合衆国ミシガン州生まれ。文学研究者、作家。フロリダ大学で米文学博士号を取得し、現在トリニティ・ワシントン大学にて教鞭を執る。2016年、『東の果て、夜へ』で小説家としてデビューし、英国推理作家協会(CWA)賞最優秀長篇賞(ゴールド・ダガー賞)、同最優秀新人賞(ジョン・クリーシー・ダガー賞)を同時受賞。さらに翌年には全英図書館(年間最優秀犯罪・スリラー部門)、ロサンゼルス・タイムズ文学賞(ミステリ部門)の受賞を果たし、世界的な高評価を得た
熊谷千寿[クマガイチトシ]
1968年生、東京外国語大学外国語学部英米語学科卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 3件/全3件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
259
2018年このミス海外第3位。 少年イーストの成長の物語だが、 全編に漂う寂寥感がいい。 15才にしては 大人びた イーストが 旅をしながら 見たものは何だったのか? 犯罪小説だが、ひどく血の匂いがしない、 現代のロードムービーの雰囲気満載の 作品だった。2018/01/13
ケイ
171
こどもの日に随分と酷い少年の話を読んだものだ。15歳が少年なら弟の13歳は? 弟の話すことは、まるで20代後半の男。それが最後まで残る違和感なのだが…。中盤で絶望したのに、オハイオでみせる展開に希望を感じた。しがらみさえなければ、生まれが少し違えば、人生は全く変わったものになってしまうのだ。ギャングの端くれでも、ペイントボール場の下働きでも、やり遂げようという生真面目さが自らを助けたのだろうか。待っているものが希望ではなかったとしても、悪くはあるまい。原題は『Dodgers』意訳しすぎだ。 2018/05/05
紅はこべ
157
ロードノヴェル、少年の成長物語とあとがきでは銘打っているが、それにしては出会いが少ない。ダメ母のせいで子供時代を奪われ、学校経験もなく、大人になるしかなかった少年の内省の物語。訳題は主人公の名前とかけているんだろうけど、夜へというのは…?野球って基本的に白人のスポーツなのか?それにしてもイーストもタイも十代とは思えない。2018/09/13
こーた
149
見張り役の少年イーストは、殺し屋の弟を伴って「箱」を脱け出し東へ向かう。LAから2000マイル、目的は、ある男を殺すこと。走りゆくバン、深夜のガソリンスタンド、公衆電話、ドジャースのTシャツ、偽装免許証、そして銃。あとにした西は振り返らずに、光景がただ流れていく。黒人の少年、渇いた大地、カインコンプレックス、辿り着いた東の果てにみつけた、ささやかな安住の地。クライムノヴェルかと思いきやロードノヴェル、と見せかけてじつは神話のような物語。なんという懐の深さ。映像にしたら映えるだろうなあ。映画化希望!2017/11/17
のぶ
112
麻薬の斡旋所の見張り役を務めていた15歳の主人公、イーストが他3人の少年の仲間とある人物を殺しに、ロスからウィスコンシンまで行く物語。ロードノベル的な要素の強い作品で、自分はこの手の話が好きなので、結構楽しめた。登場人物は皆、ワルなのだがそんなに悪人には描かれておらず、むしろ愛すべき存在に感じた。ただ人を殺しに行くという設定は道中にあまり動機的な描写がなく、焦点を決めてかかるとぼけた印象になると思う。巻末のあらすじにある成長物語というのはあまり感じず、道中のドラマを楽しむ物語だと思った。2017/11/29