内容説明
ぼくはぼくの死体を見ている―ぼくは溺死した。肉体が腐り、墓に葬られ、暗闇の中で音だけが響く。死の心地好さを味わいながら恋人のアンナのことを考える。彼女はぼくの死の謎を追っている。彼女がぼくの本当の姿を知ったら愕然とするだろう。親友レオはぼくの死をきっと悲しむだろう。彼は男娼だ。ぼくはレオとホテルで奇妙な関係を結んだ。ああ、そろそろ死んだ理由を語ろうかな…愛と友情と裏切りのサスペンス。
著者等紹介
ベッソン,フィリップ[ベッソン,フィリップ][Besson,Philippe]
1967年シャラント県生まれ。処女作En l’absence des hommesでエマニュエル=ロブレス賞を受賞。第二作Son fr`ereはフェミナ賞候補となり、映画化もされた(映画化名、ソン・フレール‐兄弟)。第三作L’arri´ere‐saisonはRTL‐Lire大賞を受賞
稲松三千野[イナマツミチノ]
上智大学外国語学部フランス語学科卒、翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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♪mi★ki♪
21
溺死体で発見されたルーカ、その恋人アンナ、ルーカの秘密の恋人男娼レオの3人の一人称で交互に語られてゆく各人の心情や思い出から、ルーカの死ぬ瞬間迄。(土左衛門が語るのよ(*_*)死の真相は追うもののミステリーではない。大した盛り上がりもない。ただ、薄暗い知らない街を歩いて唐突に終わるような読み心地。好き嫌いの分かれる小説でしょうね。私の場合は、嫌いではないけど、好きとも言い切れない。2016/12/22
訃報
3
心地よさと気持ち悪さが同居した生温かい泥のような文体と独特の観察眼が、どこまでも続く落とし穴のような深みを醸し出している。小説の醍醐味の一つは魅力的な文章であるということを再認識した。とはいえミステリを期待した読者には駄作でしかなかっただろう。完全に売り出し方を間違っている。これは死の謎を解き明かす小説ではなく、死そのものの、あるいは愛の、信頼の、裏切りの、秘密の、欲望の、喪失のお話だ。訳者の情熱は伝わってくるのだけど多分評判は良くなかったのだろう、他の著作は未訳らしい。残念だ。英語ならともかくフランス語2012/08/30
大津正
1
ある日、ルーかという青年が死んだ。 その事件から派生する死んだルーカ、その恋人のアマンダ、そして男娼のレオの三人称の独白で紡がれるこのお話☆ ミステリという枠組みで日本に紹介されたが、これはミステリというジャンルに収まりきらない作品だ。 愛があり、疑惑が生じ、裏切りが抽出される。 そのつぶさを事細かに、そして美しい文体で観察し語りかけてきてくれる☆ 上質な人間ドラマに感じる☆ 人間はどうしようもなく哀れで崇高な生き物だということをこの作品を読めば感じることができるだろう。 絶妙な語り口
Buster
1
題名に惹かれて(笑)。推理小説かと思ったら、主人公が死んだ後明らかになった彼の『真実』と向き合う、残された人々の物語だった。最後に分かる彼の死の真相が納得でやるせない。
mejiro
0
3人の登場人物(内1人は死者)が交互に語る形式。その死には深い理由があるにちがいない、と期待して読んだのでラストは力が抜けた。それと刑事と面会の場面中、「猫のようにぴちゃぴちゃと飲む。退行。」の文に醒めた。登場人物のショックはわかるけど、ここだけイメージが途切れる感じがした。訳のせいかもしれないが、たった1行で全てが台無しな気分になった。細やかな描写、詩的な文章なのに残念。2014/03/02