内容説明
八月の熱気の中、女刑事が自動車に乗り込んだ瞬間、爆炎があがった―刑事だった妹が、非業の死を遂げた。上院の調査監視分科委員会で働く兄のベンジャミンは、真相を探るために帰郷する。だが分科委員会から受けた密命を遂行せねばならず、思うように真相究明はならない。やがて謎に満ちた妹の私生活が徐々にあきらかになるが…。サスペンスの巨匠の醍醐味を詰め込んだ、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
miri
58
アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。刑事の妹が爆死を遂げ、兄が真相を探る。金と政治、徒労に終わる努力といった、結構込み入った話の運び。素人が真相究明するのは実際こんなゆったりとしたペースでかつ難しいことでしょうし、物語としては焦れますがリアルです。登場人物全てに金といううっすらとしたヴェールがかかって、他の人生の重要な要素はないのかと重苦しい気持ちに。愛がこめられた最後の妹からの手紙が余計切なく感じられました。2021/06/19
タツ フカガワ
52
ワシントンの上院調査監視分科委員会で働くベン・ディルのもとに、刑事だった妹の訃報が届く。車に仕掛けられた爆弾による殺害だった。帰郷したベンはこのとき国際的武器商人を告発するための証言を得る任務を帯びていた。きっちり書き込む作家のようで、登場人物の造形も鮮やかだし会話も面白い。二つの事件と案件が繋がる終盤の展開には大興奮。物語の内容も忘れてしまっていたほどの数十年ぶりの再読だったので、初読みのように楽しみました。2025/01/20
harass
21
学生時代にハマった作家の本の再読。 いくら昔に面白いと思っても年月がたっての再読は途中義務的読むことが多いのだがこの本は皆無だった。うまい会話と魅力的な人物造形は上質のミステリーで当たり前で、この作家に出てくるキャラはみな海千山千のタフばかりで腹芸と裏の探りあいで類型的なストーリー展開の予想がまったく役に立たない。この作家の特性である波乱の話の展開はこの本だとまだおとなしめだが一番売れたのはこの作品。複雑なストーリーは一般読者には敬遠されるのかと思う。すれっからしの玄人向け作家。2013/07/31
本の蟲
14
スパイ・ハードボイルド小説界隈では「作家が惚れる作家」と評価されるロス・トーマスの出世作。刑事だった妹の訃報を受けて、生まれ故郷に帰ってきた兄。しかし妹は通常考えられない手口で殺されており、刑事の収入には不相応な不動産を所持していた。犯人捜し。妹が持つ金の流れ。大金持ちに成りあがったかつての悪友。兄の上司にあたる上院議員の指示。様々な思惑がからみあう街での駆け引きと騙し合い。妹の死の真相と兄の決断。作家を知るきっかけになった「狂った宴」「愚者の街」ほどではないが、この作家のエッセンスは感じられて楽しめた2024/10/08
woo
12
ロス・トーマスの最高傑作ではないだろうが、ポッと出の作家では出せない味はチャンと出してくれるからこの人の作品は読んで失敗することはない♪2017/07/30