内容説明
80歳を過ぎた今、70年前の夏の出来事を思い出す―11歳のぼくは暗い森に迷い込んだ。そこで出会ったのは伝説の怪物“ゴート・マン”。必死に逃げて河岸に辿りついたけれど、そこにも悪夢の光景が。体じゅうを切り裂かれた、黒人女性の全裸死体が木にぶらさがっていたんだ。ぼくは親には黙って殺人鬼の正体を調べようとするけど…恐怖と立ち向かう少年の日々を描き出す、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。
著者等紹介
ランズデール,ジョー・R.[ランズデール,ジョーR.][Lansdale,Joe R.]
テキサス州グレードウォーター生まれ。テキサス大学卒業後、様々な職業を転々としながら創作活動を行ない、1980年Act for Loveで作家デビュー。翌年から専業作家となる。以後、白人と黒人の異色コンビ、ハップ&レナード・シリーズで人気を集める。2000年に発表された『ボトムズ』はアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞を受賞するなど高い評価を得た
北野寿美枝[キタノスミエ]
神戸市外国語大学英米学科卒、翻訳家
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
icchiy
16
1930年代米国テキサス東部に住む一家をめぐる小説。 ミステリーものというか人種問題も含みつつ、当時は人種問題に隠れていた連続殺人をえぐりだす。私的には非常に面白かったです。今年読んだ中ではベスト5には入るかな。 人種に対して誠実であろうとすればするほどに自分の立場や振る舞いに苦しむ主人公の父ジェイコブ。 主人公ハリーとその妹トムが非常にいきいきと描かれており、彼らを取り巻く登場人物や起こる事件に引き込まれていく。 結構な厚さでしたがあっという間に読了。2014/11/10
白玉あずき
15
マキャモンの「少年時代」と比較した感想もあったような。少年の成長物語としてどちらも最高、大好き。南部の田舎の生活を、良きことも悪しきことも堪能できた。集団ヒステリーを起こすレイシストたちには吐き気がするけれど。 老いて死を前にした老人の過去への郷愁。振り返れば一番輝いていた少年時代。このような設定は、もうそれだけでうるうるです。あの頃の濃密な父と息子の関係はいいなあ。世界の脅威から家族を守る父の存在は偉大だ。2014/09/19
向う岸
14
☆3 1930年代のテキサス。幼い兄妹が夜の森で見つけたのは惨殺された黒人女性だった。治安官の父親が捜査を開始するが、これは連続殺人事件の始まりにすぎなかった。KKKが大手を振って活動していたテキサスの片田舎という非常に閉鎖的な土地で、人種差別と闘いながら捜査を進める父親の苦悩と再生が心を打つ。犯人が登場した途端に「あ、こいつだ」と判るのが玉に瑕だけど。テキサスというと乾燥して砂煙が舞っているイメージだけど、ルイジアナ寄りの東部は湿地帯(ボトムズ)が広がっているそう。2016/03/26
ボーダレス
13
1930年代、テキサス東部の湿地帯(ボトムズ)で起きた殺人事件を描いたサイコ・サスペンス。黒人差別をベースにしていて治安官を父に持つ少年の成長、登場人物たちが綾なす人生のタピストリーを陰影豊かに織り込んでいる。しかし、下品な言い回しがあるため、女性が読むのは、どうかな…とも思う。2019/06/12
hit4papa
13
他殺死体を発見した13歳の少年のビルドゥングスロマンです。短編『狂犬の夏』を長編化した作品ですが、1930年代テキサスの背景として差別問題が色濃く描かれており、家族の再生がより印象的になっています。ランズデール版『スタンド・バイ・ミー』でしょうか。