内容説明
病院とおぼしき国営収容施設。患者6457号が死に、6459号が出産していたという報告に、怒れる最高責任者は職員らを質す。だが事態は奇妙な方向へ…全体主義の暴力を描く『温室』。陳腐きわまりない情事の顛末を、時間を逆行させて語り強烈なアイロニーを醸す代表作『背信』他一篇。日常に潜む不条理を独特のユーモアと恐怖のうちに斬新に抉り出し、現代演劇に革命をもたらしたノーベル賞劇作家による後期作品集。
著者等紹介
ピンター,ハロルド[ピンター,ハロルド][Pinter,Harold]
1930年、ロンドン生まれ。俳優としてキャリアをスタートし、57年、処女戯曲『部屋』で劇作家に転身。同年に『誕生日のパーティ』『料理昇降機』を発表後、『管理人』(59)で注目を集め、その後『帰郷』(64)などの作品で地位を確立。ラジオ・テレビドラマ、映画の世界でも活躍。05年ノーベル文学賞受賞。08年12月24日、78歳で逝去
喜志哲雄[キシテツオ]
1935年生、京都大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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syaori
59
英国のノーベル賞作家ピンターの戯曲三篇。登場人物たちの何気ない会話から彼らの隠している感情や欺瞞、深層心理を抉り出すような作品が並びます。例えば親友の妻との不倫を扱う『背信』の、妻の告白とその後に親友に会う場面からは、親友に対する愛憎や妻を寝取られたことに対する虚勢、男としての矜持などといった複雑な感情が読み取れるよう。多分作者が教えてくれるのは、人は保身や自負心などから意識的にも無意識的にも本音を隠しているということ、「お前にしたい話は、決して話されることはないのだ」ということなのではないかと思います。2022/04/19
ばんだねいっぺい
27
なんと、面白いことか!ハマってしまった。ハロルド・ピンター。カフカ的で好みだ。でも、売ってないんだな。なかなか。頑張って探すことにする。2016/12/07
りえこ
22
ハロルドピンターが、こんなに面白くよみやすいとは知りませんでした。もっとわかりにくいかと思っていたけど、わかりやすいしユーモアがある。他の作品も読みたくなりました。2014/07/18
イシザル
7
傀儡政権を創っても、結局 自分達が創った傀儡システムが、足枷になる。見事な終わりは始まりになる。それにしてもこれはどっかの○○省と○○庁長官のことか?んーーーー政治的だ。2020/03/23
sk
6
演劇のレトリックが駆使されている上、扱っている主題も深い。面白かった。2019/06/01