内容説明
若くして夫と死別したアンは、持てる愛情のすべてを注いで一人娘セアラを育ててきた。だが再婚問題を機に、二人の関係に亀裂が。貞淑で知られた母は享楽的な生活を送るようになり、誤った結婚を選択した娘は麻薬と官能に溺れていく。深い愛情で結ばれていた母娘に何が起きたのか?微妙な女性心理を繊細に描く。
著者等紹介
クリスティー,アガサ[クリスティー,アガサ][Christie,Agatha]
1890年、保養地として有名なイギリスのデヴォン州トーキーに生まれる。1914年に24歳でイギリス航空隊のアーチボルド・クリスティーと結婚し、1920年には長篇『スタイルズ荘の怪事件』で作家デビュー。1926年には謎の失踪を遂げる。様々な憶測が飛び交うが、10日後に発見された。1928年にアーチボルドと離婚し、1930年に考古学者のマックス・マローワンに出会い、嵐のようなロマンスののち結婚した。1976年に亡くなるまで、長篇、短篇、戯曲など、その作品群は100以上にのぼる。現在も全世界の読者に愛読されており、その功績をたたえて大英帝国勲章が授与されている
中村妙子[ナカムラタエコ]
東京大学文学部卒、英米文学翻訳家
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
50
ノン・シリーズ。女性ならではの生き方を見たようでした。シングルマザーとなったアンはセアラに愛情を注いで育ててきましたが、再婚問題でいがみ合うように。結婚とは何かを考えたのは、セアラが結婚後麻薬と官能に溺れていく流れでした。普通の親子以上の絆があった母娘。微妙で繊細な心理が痛みとして刺さります。2024/03/16
yumiha
50
メアリ・ウェストマコット名義で書かれた作品。つまりミステリーではない作品。娘と少しもめたので、つい選書しちまった💦でも、私の実生活とはじぇんじぇん関係のない作品だった。長く二人で(メイドもいるけど)暮らしてきたばかりに、私から見れば「共依存」の母娘だと思った。それが母の再婚話をきっかけに生活まるごと崩れていく。母親の友人のローラやメイドのイーディスの穿った見方が面白かった。特にローラの「60男はレコードみたいに同じことを喋る」や「恋をした男はしょぼけた羊」など、笑わせてもらった。2021/11/09
geshi
45
クリスティーの人間観察の目が見事な非ミステリの別名義作品。言葉の表面的なものの裏に隠された意図を知り尽くした作者だからこそ、やり取りのひとつひとつがスリリングで、場面が重層的に解釈される。”誰かのため”といった善意を糊塗した人間の卑怯さをこれでもかと見せつけてきて、「もう少し相手を思いやってあげろよ…」という読者の思いとは裏腹に修復できない軋みを上げる。憎しみが表面化するシーンは読んでいて胸が痛くなるほどだったが、ラストでギリギリの所の救いがあってホッとした。2017/11/29
Tanaka9999
33
2004年発行、早川書房のクリスティー文庫。訳者あとがきあり。解説は児玉数夫(映画評論家)。第2章までが前振りで第3章で大きく物語が動く。第3章のきっかけは『愛の重さ』ほどは唐突でない。最後は主人公たちへの思いやりで終わり、うまくまとまったか、という感じである。2021/04/25
kiisuke
32
クリスティーの中では珍しく殺人の起こらない作品。思春期のひとり娘セアラと41歳シングルマザーのアンの微妙な女性心理を繊細に描いた物語。ちょうど私が母親アンと同い歳であることと上の娘が思春期を迎える時期であるのが重なってお隣の家庭を覗き見るような感覚で読みました。女同士の心理戦はある意味殺人より恐怖だったかも…(笑)親子の愛情は当然ある中でお互いに対する嫉妬や束縛の感情。多少の差はあれ、どの母娘関係にも共通するのかなぁ。そんな中でも旧友ローラの頼もしい助言やメイドのイーディスのさりげない気配りが光りました。2015/04/26
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