出版社内容情報
南米のとある国で公邸占拠事件が発生。人質となった各界の要人たちと世界的オペラ歌手、ゲリラの少年少女たちの奇妙な交流を描く
内容説明
南米のとある小国。副大統領邸では、日本企業の社長ホソカワの誕生パーティが開かれていた。特別ゲストの世界的オペラ歌手ロクサーヌが歌い終えた瞬間、武装したゲリラがなだれ込んでくる。副大統領邸は反政府組織に占拠されてしまったのだ。膠着状態が続くうち、ゲリラと人質の間には奇妙な絆が生まれ、彼らはその状況に幸せすら感じるようになるが…極限状態で生まれる心の交流を描く傑作。映画化原作。
著者等紹介
パチェット,アン[パチェット,アン] [Patchett,Ann]
1963年、ロサンゼルス生まれ。サラ・ロレンス・カレッジ創作学科在学中、長篇作品が“パリス・レビュー”に掲載される。1992年にThe Patron Saint of Liarsでデビュー。2001年に発表した第4長篇の『ベル・カント』で、オレンジ賞、PEN/フォークナー賞を受賞。現在はテネシー州ナッシュビルで書店“PARNASSUS BOOKS”を営む(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぱなま(さなぎ)
18
パーティの最中に副大統領の豪邸を占拠したテロ集団、しかし目的の大統領は国民的人気のテレビドラマが見たいために不在だった…滑稽な手違いから、数週間もの共同生活を強いられることになったテロリストと人質たち。音楽やチェスやテレビ視聴、そして語学の勉強といった一見暇つぶしのような活動を通して、俄仕立てのテロリストと人質が心を通わせるようになっていく描写は牧歌的とも取れるが、期せずして多くの人々が引きこもり生活を送る現在の社会情勢をみているために奇妙な親近感を覚えながらこの小説を読むことになる。結末は→2020/07/05
Foufou
11
ペルー日本大使館占拠事件は私の母が入院した年の出来事であり、ある日に見舞った病室で母を含む女たちが事の顛末にさめざめと泣いていたのを覚えている。当時日本のマスコミもテロリスト側に同情的だった。虚構として人質に当代随一のソプラノ歌手を配し、時ならぬバカンス状態において、音楽の普遍性を一助に、人質同士、あるいは人質とテロリスト同士がする交流を描いて切ない。私見を言えば、プロットとなる二つの恋愛劇は秘めたるままにしたほうが終局における読者の悲しみは尚深く、そこに描かれた「永遠の一瞬」はより純粋に結晶しただろう。2020/10/25
shouyi.
5
南米のある小国の副大統領官邸へテロリスト集団が乱入。その日いるはずの大統領を拉致し仲間の釈放を要求するためである。しかし、大統領はいなかったことから長期の監禁生活が始まる。そんな中にも、人と人の心の交流はあり、恋も生まれる。絶対にハッピーエンドにはならないと思いながらそれを心から願った。愛とは、人生とはと考えずにはいられない作品。2021/05/23
バナナフィッシュ。
3
緻密に考えられている人物描写、ストーリーだけど川のように滑らかで淀みを感じさせない。丁寧な作業。事実考証が甘い点はあったが、それでも知識が深い。最後の怒涛の描写は、色々な結末に変えられそうだが、あえてなのだろう。2025/03/08
烏山千鳥
1
以前読んだ密林の夢がものすごく面白かったので、期待して読んだ。古い印象で(平成初期って感じ、モチーフの事件の時代なのかも)、映画的。夢だって分かっていながら現実のことを(そのときは大真面目に、あとから思う謎の思考回路で)考えている時の感覚。2025/04/16