出版社内容情報
強烈なブラック・ユーモアと不条理で戦争を描いたアメリカ文学の傑作!解説/松田青子
内容説明
昇進のために部下の出撃回数を増やす大佐。兵士を救わない軍医。身内にも敵がいるなか、仲間はあっけなく戦闘で死んでいく。ヨッサリアン大尉はあらゆる手段を用いて自分のいのちを守ろうとするも、キャッチ=22の壁が立ちはだかる。誰もが正体をつかめないのに、誰をも支配する軍規は、逃れられない悪夢を生み出し続ける。アメリカ文学に新たな地平を切り開き、今なお熱狂的な支持を得る戦争文学の名著。
著者等紹介
ヘラー,ジョーゼフ[ヘラー,ジョーゼフ] [Heller,Joseph]
1923年、ニューヨーク生まれ。第二次世界大戦中はアメリカ陸軍航空隊に所属、イタリアに出征している。終戦後はライターをしながら“エスクァイア”誌などに短篇小説を寄稿。8年を費やして書き上げた『キャッチ=22』(1961)は批評家から絶賛された。アメリカ文学の新たな地平を切り開いた書とも言われ、現在も全世界で熱烈な読者をもち、2005年に“タイム”誌により1923年以降の英語の現代小説ベスト100に選ばれた。長篇以外にも、戯曲、自伝などを執筆している。1999年没
飛田茂雄[トビタシゲオ]
1927年生、2002年没、早稲田大学大学院博士課程修了、中央大学名誉教授、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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syaori
55
バラバラに細切れに語られていた過去の出来事が整理されてくるのつれ、不条理を包んでいた皮肉な笑いのオブラートが徐々に剥がれ、「しかし、これが戦争というものだ」という理不尽で滑稽な現実が姿を現します。反芻されるスノードンの死、帰ってこないオアのために焚くストーブ…。そのなかでダニーカ医師が陥ったバカバカしい状況が端的にこの世界の不条理を象徴しているよう。結末はどう考えても悲劇的なのですがとても明るく、それはヨッサリアンが一時でも不条理な世界から「飛ん」で逃れ去ってみせてくれたからなのではないかと思うのです。2017/04/21
kokada_jnet
48
40年前に読んだ小説だが、いまだに自分の中のオールタイム・ベスト1はこれ。
ビイーン
35
戦争がテーマの小説だけれども、ここで描かれている不条理は日常生活で起こる社会の不条理を広く風刺しているように思えてならない。若かった20代に僕は追い詰められて、にっちもさっちもいかなくなって何故か笑いが込み上げてきた事がある。それがキャッチ22な状況っていうのかな。いまだに時々あの頃を思い出して背筋が寒くなる。2023/06/24
ちえ
35
終盤まではごちゃごちゃしたまま我慢の読書。出撃義務回数を確認しながら時間の中を行ったり来たり。突拍子もない登場人物たちに少しずつ愛着がわいてきて終盤、加速度的に話が(現実もヨッサリアンの頭の中も)進みエンディングへ。でも最後は結構すがすがしい。戦争や社会、体制への痛烈な批判・風刺が満載なのは確かだろうが、いかんせん私には付いて行かれな過ぎた感。訳者あとがきや時間構成の説明、解説を読んでやっと理解が付いていった。3連休で読み終えてよかった。正直、読了まで疲労困憊した読書だった。【ガーディアン1000】2019/01/14
特盛
28
評価4.8/5。ガーディアン1000チャレンジ。最高だった。上巻でのユーモアに包まれた狂気は下巻で怪物じみた恐怖の連続に変容する。下巻で戦争小説の色合いは濃くなる。資本主義を寓意として写すマイローの変化はグロテスクだ。残酷さの中での感覚の麻痺や、多くの死と生き延びること自体が生む罪意識などの描写は従軍経験者のリアリティだ。全てが狂気の中では正常も狂気になるのも印象的。まず、生き残る、その上で半径数メートルの残酷さをなんとかする。自分のことは自分でしかケアできん。狂った世の中ではバカと思われても良いのだ2024/06/28
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