内容説明
進行する病に翻弄されるアルフレッドの様子は、遠く離れて住む三人の子供たちにも動揺を引き起こす。そして迎える最後のクリスマス。イーニッドが望むように、一家全員そろってともに祝うことはできるのか?シニカルかつユーモラスに描きだされる現代人の悲喜劇は、圧倒的な力をもって迫りくる。全米図書賞に輝いたほか、数々の主要文学賞にノミネートされた、アメリカ文学界の旗手フランゼンの代表作。
著者等紹介
フランゼン,ジョナサン[フランゼン,ジョナサン][Franzen,Jonathan]
1959年、イリノイ州生まれ。スワスモア大学を卒業した後、1988年に長篇The Twenty‐Seventh Cityでデビュー。2001年に第三長篇である『コレクションズ』を刊行。全米図書賞およびジェイムズ・テイト・ブラック記念賞を受賞したほか、ピュリッツァー賞をはじめとする主要文学賞にノミネートされるなど高い評価を受けた。2009年に刊行された第四長篇Freedomは、世界の注目を集め、ミリオンセラーとなった
黒原敏行[クロハラトシユキ]
1957年生、東京大学法学部卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
132
私が終始、イーニッドに対して持ったイライラ感や腹立たしさは何なのだろう。きっと、私のトラウマの何かに原因があるかと思う。この上下巻を読むポイント、特に下巻は、私のイーニッドに対する意地悪な視点だった。子供たちをあるがまま受け入れてやりなさいよ、なぜ他の人の目によりよくうつそうとするの? ほら、最期までアルフレッドに拒否されちゃったじゃないの!と…、だんだんに性格が悪くなっていった(苦笑) もっとあるがままを受け入れなさいよ、文句ばかり言わずに、優しい気持ちでって最後の最後で特に思った。2017/04/03
まふ
101
下巻では登場人物が夢から覚めたかのように物語が深まる。ブライアンはビルゲイツのような天才だし、ロビンの一途な心身にもろにぶつかり合うデニースの生き方もわかるような気がするし、アルフレッドの「人格崩壊」は他人事ではなさそうだし、ゲイリーのエリート・ビジネスマン的発想も分かるし、「落ちこぼれ」に近いチップの人間味にシビレテしまったし、何といってもアルフレッドを病院に送り込んでからイーニッドが夢から醒めたように「しっかり」するのがよろしい。まさに全世界的な「共通家庭劇」では?と思った。G1000。2023/11/03
ちゅんさん
51
ユーモアがあって読みやすいのだが重い。個性強めの登場人物のそれぞれの言動が少しずつ自分と重なる部分があり、だから面白いのだけれどだからこそキツい。フランゼンのすさまじい力量に脱帽。素晴らしい家族小説でした。読めてよかった。2022/05/05
みねたか@
37
不正な株取引、ネット詐欺、ドラッグ、上司の妻との情事。「90年代後期資本主義の行き過ぎた様相」(解説)をちりばめつつ、骨太な家族の物語であり、人の変化(必ずしも成長ではない)の物語だった。夫との生活の悲惨さを架空の物語で埋めようする母。墜落するように失われる明晰さになすすべがない父。崩壊の予兆の中、極限状況を経ることで、また父の愛情と葛藤を知ることで、新たな自分を確立していく弟と妹。過酷な状況におびえ逃げ出す兄。老いること、生きるうえでの痛みなど、誰もが逃れ得ない現実を圧倒的な迫力で突き付けてくる。2021/08/30
ちえ
30
ランバート一家に雪崩のように沢山の事がめちゃくちゃに起こり私の処理能力が追い付かない。最後のクリスマス、それぞれが言いたいことを言えたり、過去を知れたことがコレクションズ(修正)に繋がったんだろうか。この章のゲイリーに一番共感。イーニッドは最後、家族の現実をある程度受け入れているようだけと、もっと何年も前にそうなっていれば他の家族がここまで大変な思いをしないですんだんじゃない?そう思うとどうしてもイーニッドに批判的になってしまう。どんどん変わる現代、世代間の問題ってかなり身近だ。【ガーディアン1000】2018/10/21