内容説明
ランバート家の老家長アルフレッドは頑固そのもの。妻イーニッドはなにかと落胆する日々を過ごしている。成人した子供たちの生活も理想通りとはいえない―裕福な銀行員だが妻子と喧嘩ばかりの長男ゲイリー。学生と関係を持ち勤務先の大学をくびになった次男チップ。末っ子の一人娘、才気あふれるシェフのデニースは恋愛がうまくいかない。卓越した筆力で描写される五人の運命とその絆の行方は?全米図書賞受賞の傑作。
著者等紹介
フランゼン,ジョナサン[フランゼン,ジョナサン][Franzen,Jonathan]
1959年、イリノイ州生まれ。スワスモア大学を卒業した後、1988年に長篇The Twenty‐Seventh Cityでデビュー。2001年に第三長篇である『コレクションズ』を刊行。全米図書賞およびジェイムズ・テイト・ブラック記念賞を受賞したほか、ピュリッツァー賞をはじめとする主要文学賞にノミネートされるなど高い評価を受けた。2009年に刊行された第四長篇Freedomは、世界の注目を集め、ミリオンセラーとなった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
299
著者のジョナサン・フランゼンは1959年生まれ。今やアメリカの新しい世代を代表する作家の一人である。この作品で作家としての決定的な地位を確立したようだ。本書では様々な価値観の対立と葛藤、あるいは挫折が描かれる。まずは、中西部で暮らしてきたアルフレッドとイーニッド夫妻と、その子ども達(彼らは東部で暮らしている)との世代差と地域差。長男のゲイリーは社会的には成功した銀行家であり、いわゆる新自由主義の恩恵を被っている一方で、両親たちはそこからは置き去りにされていく。次男のチップは価値観の混迷の中で脱落してゆく⇒2018/03/11
ケイ
126
他の方の感想を読むと、新時代の旗手的な作家のよう。しかし、こういう家族の話はいつの時代でもあることとも思う。私の読み方が独特なのかしら。終始、イーニッドが嫌で仕方なくて。妻としての自分から見ても、同じ母として見ても、そして子供の視点から彼女を見ても…。個人的にそばにいて欲しくないタイプ。子供たちが生活にそれぞれ問題を抱えていたっていいじゃない。みんなそんなもの。彼女が与えるプレッシャーが大きすぎて、それにみんな潰されて自己肯定出来ずにいるだけかも。アルフレッドは、よく我慢してきたものだと気の毒になる。2017/04/03
まふ
103
アメリカ中西部の小さな町に住む一家5人の物語。父アルフレッドは鉄道会社の技術部長を務めた技術屋だが自分なりのしきたりにうるさい偏屈な男。妻イーニッドは世間体を気にする女性。長男は地報銀行の部長を務めているが妻キャロラインとの仲が上手くいかない。次男チップは女学生との問題を起こして解雇された元教師で現在はしがないライター。娘のデニースは超一流のレストランのシェフとなる予定。上下合計900ページの長編だが今のところよくある家庭の描写というところ。下巻はいかに。G1000。2023/11/02
ちゅんさん
59
アメリカの家族を描いた群像劇。かなり面白い。今まで読んだアン・タイラーやアーヴィングの家族小説も良かったけどこちらはユーモアがあり読みやすい。本人たちは煩悶しながら必死に生きてるだけなんだけど、外から見るとそれが喜劇見える、まさに人生そのもの。どの登場人物にも少しずつ自分に当てはまるところがありチクリとさせられ、それらのさじ加減が絶妙。クリスマスどうなんるんだろ、下巻へ!2022/04/17
みねたか@
38
ランバート家。夫妻と息子二人と娘。上巻は 次男チップと長男ゲイリーの話がメイン。大学で文明批評をしながら内面は未熟でゲスなチップ。そのエピソードの数々が物語に強烈なドライブ感をもたらす不思議さ。一方、社会的にも家庭的にも成功している長男ゲイリーのパートも彼が心に抱える闇が不気味に見え隠れする。上巻締めくくりは彼等の育った家庭の原風景。それぞれに鬱屈した思いを抱える夫と妻、二人の息子そしてまだ産まれぬ娘の姿が俯瞰して描かれ、不穏な気配を濃厚に漂わせて、下巻への期待が高まる。2021/07/12