内容説明
美しい海辺のリゾートへ旅行に出かけた失明間近の母とその息子。遠方の大学への入学を控えた息子の心には、さまざまな思いが去来する―なにげない心の交流が胸を打つ表題作をはじめ、11歳の少年がいかがわしい酒場で大人の世界を垣間見る「カフェ・ラブリーで」、闘鶏に負けつづける父を見つめる娘を描く「闘鶏師」など全7篇を収録。人生の切ない断片を温かいまなざしでつづる、タイ系アメリカ人作家による傑作短篇集。
著者等紹介
ラープチャルーンサップ,ラッタウット[ラープチャルーンサップ,ラッタウット][Lapcharoensap,Rattawut]
1979年シカゴに生まれ、タイのバンコックで育った。タイの有名教育大学およびコーネル大学で学位を取得後、ミシガン大学大学院のクリエイティブ・ライティング・コースで創作を学び、英語での執筆活動を始める。2005年にデビュー作である『観光』を刊行。英米の有力紙誌から賛辞が集まり、期待の新人として一躍名を馳せた。2006年には文芸誌『グランタ』により才能ある若手作家のひとりとして名前を挙げられ、また、全米図書協会により「35歳以下の注目作家」に選出された
古屋美登里[フルヤミドリ]
早稲田大学教育学部卒、翻訳家、エッセイスト(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
しいたけ
135
タイが舞台の短編集。土埃にまみれた明日の見えない暮らし。難民の母娘との邂逅と別離。失明間際の母と訪れる観光地。寄り添い生きる特別な兄弟。猥雑な中にこそある一瞬のきらめきが胸を掻き乱す。懐かしさでいっぱいになるのは何故だろう。戦後の日本に似た香りがするのだろうが、私はその時代に生きてはいない。人の深いところにある受け継がれた記憶。必死な営みや愛や諦めは、空と地面と時でつながっている。心が震える7編。2017/08/30
小梅
121
タイが舞台の短編集。やっぱり最後の「闘鶏師」の迫力は凄かった。この作品を勧めてくれた読友さんに感謝。2014/12/06
ビブリッサ
118
青い海を泳ぐ僕、名前はクリント・イーストウッド。飼い主の名はラック。無責任なアメリカ人の父の面影を探すようにガイジンの女の子を直ぐに好きになっちゃうラック、失恋してばかり。だって、それは恋じゃないんだよ、ラック、通り過ぎるだけのガイジンを追いかけるのはイカレた奴のすることさ。僕は君の父親がプレゼントしてくれた豚だけど、僕はタイで生きるのさ。タイに恋したから此処で生きる。クリントは誇り高き男を演じたらピカ一だろう。失くしちゃダメなものがあるって、僕の泳ぎで教えてやるよ。暑くて湿気だらけの国は、僕らの国なのさ2017/07/26
sayan
97
英語で書かれたアジア系作家の作品は少し距離を置いていた。理由は、過度にエスニックになるものが多いから。本書はまったく雰囲気が異なる。印象にのこったストーリーは「観光」と「闘鶏師」の2作品。特に「観光」は、市場でのやりとりは臨終感が強い。地元人々が繰り広げる値切り交渉はその熱気が伝ってくる。「闘鶏師」は、ある意味、命を懸けた父親の生き方(プライド)になんの価値も感じないが翻弄される家族の生き方がもどかしくも迫力がある。淡々とした文章だけれども一気に引き込まれる著者の描写力に脱帽した。他の作品も読んでみよう。2018/04/22
kana
95
こんなに違うのに、こんなに同じ。新年初読了本はまさかのタイ系アメリカ人作家の短編集です。リゾートで観光に来る女の子を好きになってしまう未婚の母を持つハーフの少年、タイ人と結婚した息子の家に住まう体の不自由なおじいさんなど、文化や境遇は日本と全く異なり多様なのに。いたたまれなさ。しんどさ。苦しさ。どこかで体験したことのある感情が掬い上げられるような物語で、胸がきゅーっとなる。その土地の空気やメンタリティを知るのに文学って大きな力を発揮するんだなーと。暖冬にタイのうだるような暑さを想像しながら想うのでした。2020/01/02
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