内容説明
近未来の高度管理社会。15歳の少年アレックスは、平凡で機械的な毎日にうんざりしていた。そこで彼が見つけた唯一の気晴らしは超暴力。仲間とともに夜の街をさまよい、盗み、破壊、暴行、殺人をけたたましく笑いながら繰りかえす。だがやがて、国家の手が少年に迫る―スタンリー・キューブリック監督映画原作にして、英国の二十世紀文学を代表するベスト・クラシック。幻の最終章を付加した完全版。
著者等紹介
バージェス,アントニイ[バージェス,アントニイ][Burgess,Anthony]
1917年、マンチェスター生まれ。イギリスの作家。小説の執筆以外でも、評論、作曲、脚本、詩、翻訳、エッセイ、言語学など様々な分野で活躍した才人。1993年没
乾信一郎[イヌイシンイチロウ]
1906年生、1930年青山学院商科卒、2000年没、作家、翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
514
まぎれもなく全く新しい小説の誕生と言っていいだろう。系列から行けば、サリンジャーの『ライ麦畑』の抒情を捨て、思いっきりドライにした作風だろうか。主人公(それは物語の語り手でもある)アレックスの行動自体は、単に脱体制的でアナーキーな破壊に過ぎないが、それを語る言説はこれまでには見られないものだ。全編に展開されるスロボ(ことば)は、実際の若者言葉なのだろうか。それとも、著者のバージェスの造語になるものなのだろうか。いずれにしても、「サピア=ウォーフ仮説」によれば、それこそはここにしかない世界の構成原理なのだ。2015/10/11
遥かなる想い
321
1962年発表の本書は今ではクラシックな 物語らしい。確かに近未来の社会を描く 本・映画はその後、おびただしいほど 出ており、その意味でクラシックなのかも しれない。 15歳の少年アレックスを中心とする若者たちの ひどく暴力的な言動は、正直気持ちのよい 物ではないが、鬱積する若者の感情を うまく表しているのだろうか..国家は アレックスに何をしようとしているのか.. 若さと暴力とスラングが印象的な本だった。2016/08/14
パトラッシュ
200
自由放任で管理されず暴力に突進する主人公が、近未来の高度管理社会という設定にそぐわない。反暴力を条件づけるルドビコ療法を非行少年に強要する政府を「選挙で」打倒しようとする勢力に対し、内務大臣が主人公に頭を下げてごまかしを図る展開はディストピア性を著しく損なっている。少年犯罪者の人工的矯正というテーマの小説化を急ぐあまり、舞台設定が適当になったのか。『1984年』の恐怖には遠く及ばないが、主人公が使うナッドサットはニュースピークに匹敵する文学的アイデアだ。最終章の削除については正直そのほうがよかったと思う。2020/11/12
ケイ
160
完全版は初読み。裏表紙の手前にあるご本人の写真がマトモなのだが、wikiで出てきた写真には納得。主人公も友達も彼が襲いかかる女の子も若い、若すぎる、というかまだ幼い。無軌道とはいえ身体つきだってまだまだ成長過程なのだから、いくら暴力をふるったって…。いや、彼らは本気で暴れて100%の力で手加減なくやった。それが読み手の大人を怯えさせる。ある年齢特有の、後先なしの暴走をまざまざと見せられる。一番好きなのは彼が匿われる家の主人が語るところと窓のシーン。清々しくさえある。後の一章だけでなく2章分私はいらないな。2017/10/09
康功
160
スラング、暴力、、、人間はどんなに悪人になっても、その自由選択の権利を奪われる事があってはいけない。それでは、時計じかけの人間、所謂ロボットになってしまうから、、、。しかし、近未来のSFとして書かれたこの小説も、現代では現実になってしまっているのかもしれない。 自分の考えでは、最終章はかなり重要な意味を持ち、有るのと無いのとでは、余韻の残り方が数倍違うと感じている。やはり、イギリスのベストノベルに選ばれているだけある、考えさせられる内容の読後感でした。2015/12/26