内容説明
太古の昔、遊牧民の心優しい娘ディナはシケムの王子と結婚した。しかし財産目当ての兄たちに夫を惨殺され、幸せは短くも幕を閉じた。悲嘆にくれる身重の彼女は居場所を求め、カナンからエジプトへ旅立つ。言葉も習慣も違う地で女手ひとつで子を育て、ついに進むべき道と真の愛を見つける。しかし彼女を暗い過去へ引き戻す人物が現われ…創世記の世界を舞台に自立した女性のしなやかな生き方が深い共感を集めた感動作。
著者等紹介
ディアマント,アニータ[ディアマント,アニータ][Diamant,Anita]
1951年、ニューヨークに生まれる。ワシントン大学、ニューヨーク州立大学大学院で文学を学ぶ。その後、ジャーナリストとして活躍。「ボストン・グローブマガジン」をはじめ数多くの雑誌や新聞にコラムを執筆している
青木久恵[アオキヒサエ]
1966年早稲田大学文学部英文科卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
神太郎
13
創世記という男の物語のなかで、本作の主人公はディナという女性だ。創世記でも少ししか出てこない具体的なエピソードも語られてはいない。本作はディナを中心に埋もれてしまった創世記の女性たちの物語を描いてゆく。詳細のない彼女たちの物語を紡ぐことは困難を極めたことだろう。途中は正に凄惨な展開もあり、これが神の教えをとく旧約聖書の一節創世記なのかと思うが、そうかもと思わせるのは生き生きとした人々の描かれ方に他ならない。女性だから紡げる世代から世代への魂の物語。女性の強さと社会進出が注目される時期に良い本に出会った。2015/04/01
兎乃
8
この本は廃版でAmazon等では¥1で購入できる。だから値打ちがないわけではない。本書は全米ベストセラーリストに65週間ランクインしている。旧約聖書・創世記12章から始まるアブラム・ヤコブ・ヨセフ・エサウといった馴染み深い男性たちの短い物語の中に、名前だけが登場する女性たちがいる。この女性たちの物語をディアマントは書いた。聖書は父系の物語であり、女性たちは~の娘・~の妻として登場するがその名前は無言の暗号のような存在で 一片の脚注でしかない。→2012/09/14
mojyachiko
1
壮大な、名もない女達の物語。母から娘へと脈々と伝えられる男の知らない歴史。大地への感謝と愛、産み育てる性への自信。自分も歴史の一部なのだと安心し、前を向いて歩き出せるようになる一冊。2018/06/18
j
1
これはすごい!聖書の一節をここまでの物語にするなんて…旧約聖書は特に超男性目線の書物ですがそこに垣間見る女性たちの背景には沢山の物語があるんだろうなと色々な思いをはせることができました。この作者の知識量がすごいなとびっくりしました。ただ元の聖書の物語を知らないとこの面白さは伝わらないのでなかなか日本では難しいかもしれないですね。2015/02/05
kinaba
1
☆ 創世記の一節から紡ぎ出す、呪いの言葉と生の命脈。よい二次創作。2011/09/10