内容説明
CIAの協力者が未発表の回想録を遺して死んだ。その葬儀の直後から、息子の元刑事グラニーの周囲の状況は急変した。父の愛人、旧友が殺され、CIAと匿名の人物が回想録の買収を申し入れてきたのだ。内幕暴露を恐れる者が暗躍しているらしい。命をも狙われ始めた彼は、回想録を餌に反撃の罠を張るが…虚々実々の駆け引きをスリリングに描く巨匠屈指の傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
maja
19
CIAの臨時雇いであった男の葬儀はアーリントン墓地で行われた。限られた会葬者と息子に託された回想録。回想録の内容を巡りそれぞれの思惑が錯綜するが、やがて・・。自分にとっては懐かしい気分になる作家のひとりロス・トーマス。このシリーズを未読だったとは!俗気から超越したような元刑事グラニー、ようやく表面に浮かびあがってきた人物と対峙する。突如として人格が変わったかの様で翻訳がくだけたのかと一瞬思ったが、そうなのか。俳優業なのだ。さらりと小粋に進んでこれもまた楽しめた。2025/01/03
harass
15
デビュー作の「冷戦交換ゲーム」の登場人物が同じと聞くが先にこっちを読む。CIAに協力していた父が亡くなった。元刑事の主人公は父が書いたという回顧録の存在を知る。葬儀で同席した父の旧友や知人が何者かに殺され、回顧録を大金で買い取ろうという連絡が来るが…… 抜群に登場人物と会話が良いのはいつものことで読み終わるのが惜しかった。解説で小津映画のようだとの意見があり同感だ。人物がただ動いて喋っていれば面白く、話がどうだろうとどうでもいいのだと。大胆で乱暴な断言だが、非常にしっくりくる。2013/08/21
duzzmundo
10
再読。パディロとマッコークルの最終巻。歳を重ねた彼らは主役ではなく、マッコークルの娘とその恋人が主役。前作からリアルタイムで20年ほど過ぎているので、シリーズものですが作家の筆力に圧倒的な差があります。シリーズを続けて読むととてもおもしろいです。できることならロストーのシリーズものをもっと読みたかった。パディロとマッコークル、アーティとデュラントのシリーズはどちらもおもしろいですが、シリーズ全体の比較だと個人的にはややアーティとデュラントのシリーズに軍配が上がる気がしてきました。2023/11/09
サンディK32
7
何十年も昔にハードカバーで読み耽ったロストーマス。旧友と久々に再開して飲みながら昔話しをしていたら突然思い出して、はずみで登録してしまった。マッコークルとパディロ、素晴らしいバディです。
魔魔男爵
7
本書のベストセリフ「パパたちは十三歳ってのが、いったいどんな年頃か、覚えてさえいないくせに」「ありがたいことにな」「つらかったのよ」「誰でも十三のときはつらいんだ」苦悩する子供を軽くスルーしておっさんの今を感謝する大人の為のエンタメ。相変わらず、うっとおしい心理描写が無く、主人公サイドが民間人なのがロス・トーマスの魅力。謀略小説はスパイ小説とほぼ同義だが、愛国心溢れるプロスパイは常に唾棄すべき敵なのはいいよな。今回の敵はCIA。主役は元刑事の俳優w2009/09/23