内容説明
有能な教師にして模範的市民のコンラッドの運命は、あの夜から大きく狂いはじめた。ほんの気晴らしにヒッチハイクの娘を拾ったのがいけなかった。別れた直後に娘が何者かに殺され、殺人の容疑をかけられてしまったのだ。しかも醜聞を恐れて警察についた小さな嘘から、コンラッドは予想もしなかった窮地へと追いつめられていく―緻密かつ巧妙なプロットで描く、英国推理作家協会賞ゴールド・ダガー受賞の傑作サスペンス。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ペグ
67
傲岸不遜な主人公である。警察から疑惑の目を向けられた時には我が身のプライドと保身の為に嘘をつく。その嘘を守る為に右往左往する姿に嫌悪。警察の捜査はあくまで供述と物的証拠なのだけど、心理描写を描く作品なので古さは感じない。1984年英国推理作家協会賞ゴールドダガー受賞作品。この作家のデヴュー作(29,Herriott Street)は、キングズリー・エイミスが絶賛したとのことで、是非読みたいけれど翻訳されていない。古いのでもう無理?疲れたけど読み応えのある小説だった。2019/02/13
儚俣
7
人間を日常性善説で見るか性悪説で見るかによって見方が完全に別れるお話。性善説で見た場合、悪いのは主人公。自身を正当化させる為につまらない嘘をつき、捜査を混乱させ、自らの生活も破綻していく。しかし、性悪説で見た場合、人は誰しも保身の為に小さな嘘は日常つくもの。普段勤厳実直に生活している男にはあまりにも酷い仕打ち。警察は初期段階から悪感情ありきで冤罪を被せようとまっしぐら。周りの友人はマスコミ報道先行で個人をかえりみない。妻は自身の浮気欲のみ。まったく些か方苦しいが真面目な小市民なのに、ちょっとした保身でコテ2016/03/14
けいちゃっぷ
5
作者の底意地の悪さがこれでもかと炸裂します。 「謹厳実直な教師がふとした出来心でやらかした恥ずかしい行為。そして、それを覆い隠そうとした、ささやかな嘘」(解説より)が次第に教師を追いつめてゆく。 なんでも自己正当化しようとする教師にイライラしましたが、徐々に転落していく様を読ませられると、あら不思議、だんだんと同情の念が湧いてしまう。 ああ、これはブラックユーモアに近いコメディなんだな。 作者はニコリともしないで最後まで教師をいたぶります。 その快感さにもっと早く気が付いていれば・・・。 366ページ 2013/12/21
赤井流久
2
☆☆☆ 目もくらむような展開や唸るような設定で驚かせるという類の作品ではなく、政治屋によくいそうな唾棄すべき人物である主人公が事件に巻き込まれ、その薄っぺらい欺瞞に満ちた自身への正当化が、ぼろぼろと剥がれ落ちて転落していく様を、ざまあみろと楽しむ作品である。こういう、表面を取り繕い保身に勤しむ輩は、誰でも嫌悪を抱くと思うが、その描写が実に長けている。そして、そんな奴を主人公に据えて展開する物語は、恐らくそう多くはないだろう。推理小説としては楽しめないが、小説としてはかなり楽しませてもらった。2014/06/11
Jimmy
2
なかなかひねりの効いた作品ですが、基本的に文体がダラダラしていて私の個人的な趣味ではない。しかしこのダラダラと不快な文体が、このプロットには不可欠、という気にもさせる不思議な作品。なかなかアイロニーが効いた良い具合です。2008/08/03
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