内容説明
経営合理化に反対の共同経営者、解雇を言い渡された社員、出版を断わられたミステリ作家…殺されたジェラードはあまりに多くの人間を敵に回していた。野心的な彼は、自らの出世と保身のためには手段を選ばぬ冷徹な男だったらしい。ダルグリッシュたちは複雑な人間関係の中に分け入り、尋問を重ねていく。やがて、容疑者の一人が変死体で発見され…現代ミステリ界の頂点に立つ著者が、人間の罪とは何かを問う傑作本格。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
28
マシンガムの後任として、ユダヤ人のダニエル・アーロン警部が登場。ダルグリッシュにいい所を見せなければ!と意気盛ん。そのためにとんでもない失敗をやらかしてしまう。彼はこの後レギュラーになれるのだろうか。 一方ケイトは恋人アダムのプロポーズを振り切って仕事=ダルグリッシュを選ぶ。後にライバルが登場することを考えると、アダムを振って良かったのか?とも思うが彼女にはこの後も恋バナが登場。要はモテるのだ。2021/11/07
bapaksejahtera
14
下巻も暫くは丁寧な描写が続く。一連の描写はそのうち何かが絡んでくると思いつつ読み進むが、事態は息もつかせぬ急展開を取る。犯人と目される人物が明示、さらなる殺人を犯す。読者は犯行動機も推察するのだが、本命の仇がまだである。見当違いの被害者を連れ回してどうすると思うが漸く辻褄が合ってくる。土壇場で事態を追跡したダニエル警部は譴責も覚悟の行動をとる。書題の意味を知って納得はしてみた。それにしても欧州人同士は独軍の行為とドレスデン空爆を相対的に評価する。真珠湾を原爆や東京空襲でチャラにされて黙り込む日本人とは違う2023/03/15
Tetchy
4
『策謀と欲望』、『死の味』に比べると遥かに読みやすく、しかも解りやすい。当時の自らの読書力の無さが最大の要因であろうが、原子力発電所の世界なぞ、およそP.D.ジェイムズに似つかわしくない世界を扱った点がまずかったように思える。やはり今回のように出版業界のような勝手知ったる世界を舞台に扱う方が俄然物語に勢いがついてくる。本当に今回は面白かった。2009/04/13
詩界 -うたか-
3
めちゃくちゃ複雑かつ緻密に作られているのにサッパリ把握出来ない脳内処理をどうにかしたい。ううーん、これはもう久しぶりにアガサ達の戯曲から入って小説を読み直し、洋書の文体になれなくては……自分にある世界観と違うから難しい……勉強する時間ある時にゆっくりと読みたい2019/08/12
hill.384
2
名門出版社を舞台とした連続殺人事件。複雑に絡み合った社内の人間関係の描写は読みごたえがある。若いタイピストのマンディの存在が大きい。 ラストシーンでの犯人やダニエル警部の心中を考えるとやりきれなさを感じ、まさに「原罪」という言葉について考えさせられてしまう。2014/10/07