内容説明
2021年、世界中でなぜか子供が生まれなくなり四半世紀が過ぎた。絶望と無気力が蔓延するなか、イギリスでは国守ザンが絶対権力を握っていた。ザンのいとこで大学教授のセオは、反体制組織の女性と恋に落ち、組織のメンバーからザンの執政の恐ろしい裏側を知らされる。やがて組織がザンに目をつけられ、その女性が助けを求めてきた時、セオは思わぬ逃亡生活の渦中へ…ミステリ界の頂点に立つ著者が新境地を拓いた話題作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
307
P.D.ジェイムズは元々はミステリー作家なのだが、そんな彼女が初めて挑んだSFがこれ。SFでありながら、ミステリー作家らしくプロットの展開はサスペンスに富んでいる。ことに中盤の転回点からは一層にスリリングだ。私は、終わり近くになっても結末の予想がつかず、ハラハラしながら読み進めることになった。もっとも、エンディングはこれしかないという風ではあったが。終末感が物語の全体を覆い、その限りではコーマック・マッカーシーを思わせないでもないが、その実はやはりエンターテインメント小説である。ザンを頂点とした政府の⇒2023/03/18
ケイ
108
作者の問題提起はよくわかるのだが、科学的に無理がありすぎるのではないかなと思える。ストーリーを仕上げるために都合よくSF的手法を利用してはいないかなあ。2017/06/08
Tetchy
8
P.D.ジェイムズにしては全く異色の、子供の生まれない未来の地球を舞台にした物語。何故子供が生まれないかの謎を解明するとか、その設定でしか成立し得ない事件の解明というようなシチュエーション型ミステリではなく、あくまで世界を設定した上で繰り広げられるヒューマン・ドラマを描いている。迎える結末はこういった設定で容易に予想されるものであるが、ジェイムズが敢えてこのような母性に満ちた物語を紡いだことに興味を覚える。2009/03/17
なって
4
世界中の女性が不妊になり、一切子どもが誕生しなくなるというストーリー。世界中が混乱し、かつて守られていた秩序が破壊されていく。犯罪の横行、集団自決の推奨などかつては逸脱とされていた行為が広がっていく。あたしは最後までジュリアンのことが好きになれませんでした。結局は自己耽溺したジュリアンが悪いのでは。彼女が自己保身に走ったことでルークやガスコイン、ロルフ、ミリアムの命を奪うことになったのだと思います。もっと早く真実を告げていれば、結果は変わっていたかもしれないのにと思うと辛いです。2014/06/20
ゆーかり
3
P.D.ジェイムズと言えば推理小説なのだがこれはH.G.ウェルズかジョージ・オーウェルのような小説。近未来の2021年。1995年以来世界的に子供が産まれなくなったという設定。途中までは一体どういうところに持って行くのかと引き込まれていったが、子どもの父親が誰か察し付いた人物が非常に無残の殺されという辺りから嫌な感じが。死というものに妙に無感覚なP.D.ジェイムズ。
-
- 和書
- 児童文学の伝統と創造