内容説明
ダルグリッシュ警視が休暇でサフォークの叔母を訪ねた日、両手首を切断された男の死体が、小さなボートに乗って近くの海岸に流れついた。付近の村に多く住む物書きの一人、推理作家のモーリス・シートンだった。さっそく郡警察が捜査を開始したが、解剖の結果、意外な事実が判明した。死因は心臓麻痺。自然死だったのだ。だが、はたして純粋な自然死なのか。手首切断の背景には何があるのか?ダルグリッシュは否応なく事件に巻き込まれていつた…。人間と背景の緻密な書きこみと謎解きの妙が見事に融合した、ミステリの新女王の初期の秀作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
セウテス
64
ダルグリッシュ警視シリーズ第3弾。ダルグリッシュが休暇で訪れた叔母の住む岬に、ボートに乗った両手首を切り取られた死体が流れ着く。タイトルから解る様に、セイヤーズ氏「不自然な死」へのオマージュ作品であり、本家そのままと感じる描写も後半には在る。しかし何故手首が切り取られたのか、という考察が少ない上に面白くない。圧倒的に、本家に軍配が上がると思う。どうやら、独自性を出し始めた時期に当たる作品なのだろう。また名探偵の見せ場である犯人を特定するクライマックス、こうした演出にも作者なりの批判を込めて描いたと感じる。2018/05/21
kyoko
21
なんか気色悪い物語だった。好感を持てる人はダルグリッシュの叔母のジェインだけ。我がまま勝手な村の人たち、それぞれの人間性に興味を持てないまま(自分のせい)、突然の独白で事件解決。ダルグリッシュがなぜ犯人がわかったのかも把握できず。あまり長くないのはよかったけど。厳しい自然と海辺の険しい崖の描写は魅力的。この海の向こうはアメリカか…確かにそうだよなあ。2022/05/26
花乃雪音
19
ダルグリッシュ警視シリーズ3作目。今回は管轄外での殺人事件のため探偵のような動きとなる。タイトルはセイヤーズ『不自然な死』のオマージュとなるが、不自然な死体というには両手首が斬られた死体というだけでは大仰な表現に思えた。しかし、その後に実は自然な死であったことがわかる。最後に語られる両手首を切られた不自然な死体とした理由は凡庸だが死体を不自然と自然の間で行き来させたことでタイトルが意味をなしたように思える。2019/08/14
bapaksejahtera
18
シリーズ第1、2、4作と読んでいずれも人物造形をしっかりと書き込む手法に満足して手に取った3作目。本作も調子は同じ。主人公警視が休暇で訪れた先は文壇関係者が集まって住む海沿いの村。そこに住民である小説家の遺体が両手首切断され流れ着く。主人公は地元警察の捜査に自ずと関与する次第。警視の恋愛模様がかなり書き込まれる。容疑者と思われる人物が揃いも揃って愚物。最後に主人公の身を危うくする嵐のスペクタクル。この描写が私の読解力では充分飲込めない上、犯人の自白テープ初めプロットが不自然。私には愚作としか思えなかった。2022/12/09
Ribes triste
13
ダルグリッシュ警視シリーズ。休暇でジェイン叔母の家を訪ねたダルグリッシュは、推理小説家の殺人事件に遭遇する。高校時代以来の再読だったのですが、ダルグリッシュって仕事は優秀だけれど、恋愛の方は、ダメダメだったのですねぇ。2018/09/26