内容説明
十八歳の誕生日を迎えて、フィリッパは実の両親を捜しはじめた。だが彼女が探りあてたのは、父は少女暴行罪で服役中に獄死、母はその少女を殺害した罪で今も服役中という恐ろしい事実だった。母メアリの出所が間近であることを知ったフィリッパは、養父母の反対を振り切って、出所後の母と一緒に暮らすことにした。だがフィリッパだけがメアリの出所を待っていたのではなかった。娘を殺された父親も、復讐のために、殺人者の出所を待ちかまえていたのだった…。人の犯した罪とは何か、親子の絆とは何かを問う、ミステリの新女王の戦慄の問題作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まふ
80
10年前に幼女を犯した夫を庇ってその幼女を殺し、終身刑として刑務所に服役している実の母を持つ怜悧な娘フィリッパが養父養母の家を飛び出して仮出所の母と2か月間一緒に住む。だが幼女を殺された父親はその殺人犯の母親を殺そうとたくらみ…と、事件は渦巻のように静かに膨らんでいく。警察官も探偵も出てこない普通の小説。一筋縄ではいかない異常な人間関係を作り上げた作者の狙いはいったいどこにあるのか。ミステリ-界の傑作のひとつと言われる作品とはいうものの…。重く暗い人間関係の好きな読者にお勧めの作品。推理100。2023/01/05
bapaksejahtera
17
ダルグリッシュ物でない作品は「女には向かない職業」の外初めて。いずれも傑作だ。養女に出され育った娘が成人し法改正で与えられるようになった権利を行使、幼女暴行犯の父と殺人犯の母の実子であった事を知る。娘は実母と会い暫し生活を共にする。他方嘗てこの女に娘を殺された被害者の父は、仕事も放棄して復讐を図り接近してくる。登場人物は娘、養父母、被害者父といい、一様に同感を得にくいが細かな描写がなされる。暗いテーマ乍ら読ませる筆力は流石。最後は明るい将来をも見通す結末。「須く」を「べし」で結ばない訳文頻出に吃驚はしたが2023/02/14
ごへいもち
12
あまり楽しい読書ではなかった2022/06/06
gecko
8
自分が何者であるかはどう決まるのだろう。血か、どのように育てられたかということか、どんな服を選び、どんな絵を自分の部屋に飾りたいと思うかだろうか。『女には向かない職業』などの探偵小説で知られる著者による非推理小説だが、やはりこれもミステリーと言ってよい。人間の才気と凡庸、怯えと自惚れ、強さと弱さ、教養にも無教養にも、同じくらい距離をおいた容赦のない洞察が向けられる。誰しもが一面では愚かで哀れだと気づかされるが、それでいて誰しもが自分自身を生きることに開かれているのだとわかる。イギリスの社会階層も描かれる。2020/05/17
Tetchy
7
もう物語の設定だけで、悲惨な結末が訪れるのは解っているのに、読まされてしまう。本は分厚く、中身は重いが、止められない一冊。オイラのジェイムズ・ランキングでは1,2位くらいにくる作品。2008/10/24
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