内容説明
『長いお別れ』で出会った富豪の娘リンダ・ローリングと結婚し、プードル・スプリングスの豪邸に住むことになったフィリップ・マーロウ。だが、妻の金で暮らすことを潔しとしないマーロウは、町はずれに探偵事務所を開いた。最初の依頼人は、借金を返さない男を捜してほしいというカジノ経営者だったが、一見単純な依頼はやがて殺人事件へと発展する。巨匠の未完の遺作をパーカーが完成させた、話題のハードボイルド長篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Kircheis
287
★★☆☆☆ チャンドラーの残した遺稿をパーカーが完成させたもの。 何とあのマーロウが結婚しているという驚きの状況で物語は始まる。お相手は『ロング・グッドバイ』に登場した富豪の娘リンダだったが、これが全く性格の合わない夫婦なのである。 そもそもマーロウがセレブ生活で満足するはずもなく、すぐに探偵業に戻ってしまう。展開も平凡だし、マーロウが守ろうとする男がクズ野郎すぎてイライラした。その辺りはパーカーが同年に書いた『プレイメイツ』と少し被る。 本作はマーロウが何をしたいのか分からず不完全燃焼だったと思う。2022/10/20
催涙雨
31
チャンドラーの遺稿を引き継ぐ形でパーカーが書きあげた作品。チャンドラーが書いたのは四章までらしいのだが、四章の時点では物語の広がりがまったく見えてこない。これをひとつの作品に仕上げたパーカーの手腕に拍手を。チャンドラーが遺した数少ない設定であるリンダとの関係性の展開のしかたを見ていると、これをチャンドラーが書いた場合どうなっていたのかはやはり気になるところ。今となっては仕方のないことだが、レスを庇う動機がやたら薄っぺらい点をはじめ今までのマーロウ像と異なる部分が多く、マーロウものとしての見所は少ない。2018/03/13
ふみふみ
9
再読。刊行時に読んだ際はそれほど気にならなかったけど今読み返してみると相当にヒドイ。チャンドラーのリリシズムが雲散霧消しその代わりにマッチョイズムが10倍投入され、これはもう完全にスペンサーシリーズの世界。なので本書はフィリップ・マーロウのパロディ物と捉えるのがいいかと。ほんと翻訳者が誰なのかは重要ですね。村上春樹が新訳してくれることに期待です。2021/05/02
明石です
8
本作執筆中に逝去した著者チャンドラーの後を継ぎ、同じく探偵モノを書いていたロバート·バーガーが完成させた異色の遺作。私にとってレイモンド·チャンドラーのこのシリーズは、何度も繰り返し読んできた聖書のような作品なので、それを他人が手をつけるとは何事!と思っていたけど、まさかのまさか、超名作でした。こんなこと言ったらアレだけど、全てチャンドラー1人で完成させた作品のいくつかよりも優れてさえいる笑。どこからどこまでがチャンドラーの筆か、前知識を入れずに読んだら、どこからどこまでか検討もつかなかった笑。天晴れ。2023/09/13
29square
7
読書会の参考になるかと恐る恐る手を出す。冒頭4章以後はパーカー作による補稿。手堅いストーリー展開、ソリッドな描写…つまりこれはチャンドラーではない。マーロウ-リンダもの二次創作としてなら結末の「ありそうな感じ」で及第点か。2021/03/21




