感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
セウテス
58
〔再読〕作者第8作品目。目を覚ますと、病院のベッドにいた。どうやら喉を切られて、一命をとり止めたらしいが記憶が無く、自分が何者か解らない。この私目線で物語は進むのだが、記憶の謎を探る物語かと思っていたら、自分が助けられた場所で再び喉を切られた死体が発見される。実は最初に読んだ1970年代と違い、現代では後の作品に本作のトリックを使用した作品が数多く在る。しかも後発の作品ほど、出来が良いのは仕方がないだろう。しかし作家がプロットを駆使して、読者に挑戦する一つの形を作った作品として、一読の価値は在ると考える。2017/11/20
みっぴー
47
身元不明の記憶喪失ものです。裸体に靴を履き、喉を引き裂かれていたそうです。靴にはなぜか千ドルが。自分の正体を探す話ですが、おそらくミステリー慣れした読者なら、なんの注意を払わなくてもトリックを見破れます。そうなってしまうと、作者の用意した渾身のオチで、「え?知ってたよ?」と、混乱すること請け合い。ミステリー初心者向けかなぁ。2018/08/06
hit4papa
30
喉を裂かれ靴を履いただけの裸体の男。記憶を亡くした瀕死の男の手がかりは靴の中の千ドルだけ。並行して語られるのは、同じシチュエーションで死亡した男の捜査という、出だしからぐっとくる謎が開陳されていきます。生き残った男は、警察に目をつけられながら、自分の過去を探るという展開は面白いのですが、このミステリは好き嫌いが分かれるアレです。トリックのための無理矢理な人間模様が、混乱に拍車をかけます。そもそも、この手の作品はアイディアそのものを評価すべきなんでしょうね。嫌いではありませんが、現実感は全くありません。2017/12/17
ベック
4
主人公である私が病室で目覚めるところからはじまる。わけがわからない私が事情を聞くと、ニューヨークの夜の街路で、咽喉を切られ倒れていたという。靴をはいていただけで、あとは裸だった。 靴の底には千ドル紙幣が一枚入っていた。回復した私は、記憶を取り戻すため自力で調査を開始する。唯一の手がかりは千ドル紙幣だけ。 さて、この男にいったいどんな事が起こったというのか? 本書の真相は、まったく恐ろしい。全編に不気味な雰囲気がつきまとっている。主人公の私は、無感動で冷たいし、彼のみる悪夢はわけもなく怖い。
ヨッシー
4
どうもバリンジャーは、ネタは上手いのに扱いが微妙な作家かなという印象。トリックは非常に面白いものだし、これを長編に組み込むのもいい考えだと思います。最後のある人物の正体もなかなか毒があっていいしね。リーダビリティも十分。ただ、イマイチ盛り上がれないまま終わってしまったなと思います。基本主人公が淡々としすぎ……というか、ぶっちゃけヤな奴な訳で。作者はこの性格を最後のギャップに持ってこうとしたんでしょうが、ちょっと失敗だったかなという気がします。かなり面白かったので、あと一歩かな。一読の価値は十分にあります。2010/06/13