内容説明
寂しい金持ち女に窮地を救われ、結婚を迫られた男は、衝動的に彼女を絞殺した。強盗に襲われたように装い、証拠品はすべて処分、アリバイも完璧で、事件は迷宮入りしたかに見えた。死体に残されたアクセサリーの痕跡を、迷宮課のレイスン警部がみつけさえしなければ…スコットランド・ヤードで他の係や課が捨てたあらゆるものを引き受ける迷宮課の事件簿を公開。倒叙ミステリの伝統を守る全8篇を収録した短篇集第三弾。
著者等紹介
ヴィカーズ,ロイ[ヴィカーズ,ロイ][Vickers,Roy]
1888年イギリス生まれ。デイヴィッド・ダラム、セフトン・カイルなどの別名義を持つ。オックスフォード大学ブレイズノウズ・カレッジに学ぶ。週刊大衆誌の記者として犯罪実話などを書き、『ノヴェル・マガジン』編集長を経て専業作家に。1921年にThe Mystery of the Scented Deathでデビュー。65年没
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感想・レビュー
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セウテス
64
迷宮課事件簿シリーズ第3弾。倒叙ミステリの8短編集。以前は、海外の映画作品を観たときに、名作と言われる作品ほどラストが呆気なく感じたものです。それからどうなるのか、何故この様な終わり方なのか、色々と考えたのですが、この余韻を味わえる様になったのは、本シリーズのお陰である。また、大金を横領して逃亡した犯人が、落とした10円を無視した事で、ラストで10円が足りなくなり捕まるという作品があります。本作の楽しみも、犯人すら忘れている小さな事から、たどり着いてしまうこの驚きに在ります。余韻と驚きを、味わう良作です。2017/04/20
elf51@禅-NEKOMETAL
9
クロフツ以外に倒叙推理はないかと読み出した迷宮課事件簿シリーズ第3作目。解説にあるように,当時は多かった動機を金銭に関わるものとした作品が少ない。どの作品も最後の数行でキマるわけだが,それぞれにあぁ,そうかと余韻を残す作りだ。短編ならではの味わいだろう。2022/04/12
Kitinotomodati
4
倒叙ミステリ。小さなミスから犯罪が明るみにでるのだが、地味な印象。表題作「老女」って、私も十分老女だわ。2021/01/16
UPMR
1
迷宮課シリーズ3作目。といいつつ、非シリーズものも入ってる。倒叙ものの醍醐味である、犯人を指摘する手がかりの妙味は正直かなり薄い。心持ち前作に比べて事件が起こるまでの描写のほうが長くなり、迷宮課の出番も減っている気が。そのぶん犯罪心理小説としては抜群に面白いから、文句を言う筋合いはないけど。個人的ベストは、「いつも嘲笑う男の事件」。個別感想→「猫と老嬢」非迷宮課。猫に入れ込む老嬢という造形がありがちで、読み味は軽い。「ある男とその姑」犯人と被害者の妻を巡る支配権争いは面白いが、手がかりは見え見えだ。2025/09/01
Radwynn
0
迷宮課事件簿(3)「猫と老嬢」こういう終わり方をするミステリは初めてでした。後味が悪くない、のは、イギリス流のアイロニーが密かに効いているからなんでしょうか。 ところでこの本はBOOKOFFで入手しました。まさかBOOKOFFにロイ・ヴィカーズがあるとは思っていなかったので驚くと同時に嬉しくなりました。どこか近くに同好の士が居る、と思ったからなのですが…売ったということは、そうでもないのかな(苦笑)2011/06/07