内容説明
ボートの先にオレンジ色の光が見えた。奇妙な建物を照らす、巨大な投光照明。そう、厳重な警備で知られるサンクエンティン刑務所だ。ベンは考えた。四日以内に兄を脱出させなければ。なんとしても…房内でアーニーは、ただ一つのセリフを頭の中で繰り返していた。このままでは処刑される。弟の手を借りて脱獄しなければ。なんとしても…脱獄不可能の巨大刑務所からの脱獄計画を描く、異色作家の奇想天外なサスペンス。
著者等紹介
宇野輝雄[ウノテルオ]
1931年生、1953年明治学院大学英文科卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ブラックジャケット
14
発表は1957年、軽い読み物としての小説が消費されていた古き良き時代の作品。ベンの兄のアーニーは収監中に脱獄に失敗、罪は重くなる一方。死刑さえ予想される。50年代のサンクエンティン刑務所の恐ろしさは、現代からは想像もつかない。ぎゅうぎゅう詰めの最悪環境。しかし外部からの侵入には、盲点があった。ベンはアーニーの恋人のルースと共同で奇想天外の作戦を実行する。壁に耳あり。隣に住む男は看守のノヴァだった。この四人で物語は紆余曲折で進む。読者の気を引きながらのご都合主義。50年代のおおらかさを感じさせる一篇。 2021/12/13
tai65
3
星5つ2020/01/22
Y.Yokota
3
自分は今までフィニイという作家は彼の書く主人公のような人だと思っていたし、その話の多くが1人称で書かれているので、殆どの読者がそう感じているとも思う。この本のベンしかり、『盗まれた街』のマイルズしかり、『ふりだしに戻る』のサイモンしかり。だから、これほどまで主人公の気持ちや台詞が本当に思えるのだと。でも今回読み返してみて、アーニーについてもあまりに理解があることがわかった。もしかしてフィニイもアーニーのような経験があるのではないか?収監とか脱獄とかではなくて、劣等感とか他人の目についてのところだ。2018/02/22
c2c
3
「完全脱獄」という、ありきたりな書名に、皆さんは見向きもしないでしょう。。この話は脱獄がメインではない。兄弟や結婚相手との人間関係の物語。脱獄後のラストのシーンで考えさせられた。2011/10/20
Toy
1
脱獄ものとして脱獄の手法は、こんなんでいけるか? と思ってしまう。ただ、兄と弟の心情、それが最後の伏線になっているミステリーと読むと意外とすんなり。脱獄メインの物語なんだけど、実はそれを題材にしたミステリーでもあったのかも。2018/09/26
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- 洋書
- §§ 241-24…