内容説明
美術品密輸業のギルバート・ケンプにとって、それは朝飯前の仕事だった。ニカラグアの女富豪が、ヨーロッパ各国で買い集めた名画を輸出規制のないスイスまで運び込んでくれというのだ。高価なセザンヌの絵を抱え、ケンプはさっそくチューリッヒへと向かった。ところが駅に到着するやいなや、何者かの襲撃を受け、不覚にも輸送中の絵を奪われてしまった。あまりにも手際のよい襲撃の背後に潜むものは何か?プロとしての意地をかけ、ケンプは見えざる敵へ反撃を開始した。冒険小説の雄が美術界の裏側に生きる男の闘いをスリリングに描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鐵太郎
28
ロンドンに住む胡散臭い骨董商ギルバート・ケンプが主人公。古い拳銃などを扱って、時にはボロ儲けしますが、いつも成功しているわけではない。裏では、密輸もやっていたらしい。彼が依頼されたセザンヌの絵画の密輸に失敗した後、次の仕事で見たものは「拳銃を持つヴィーナス」の絵画。これに隠された秘密とはなにか。そして結末は、夢を捨てたヒーロー? いや、ケンプはそんな高尚なものじゃない。ただの夢破れた男。これもまた、ライアル節。いいね。2005/10/04
ホレイシア
8
満足♪初期の作品から後期の作品へと移る段階の第1弾。個人的には「死者を~」のほうが好みだが、一般受けするのはこちらかも。拳銃を扱う骨董商が、副業として美術品の密輸を手がける。絵画の真贋やらヨーロッパ各国の法律の違いなど興味深い事柄に満ちているのはどの作品にも共通していて、今回も堪能した。何かに精通しているというのは素晴らしいが、さてさて、活字中毒はその中に入るかな(笑)?2009/02/27
連雀
5
始めて読んだ20代の頃、ギャビン・ライアルの他の作品は繰り返し読んだのに、本作だけはあまり読み返さなかったのを思い出しました。あらため読んで、とにかく主役であるはずのギルバート・ケンプが冴えない印象でした。小狡く立ち回るのですが、状況にすっかり嵌っている感じ。でも、そんな泥臭くちっとも主人公らしくない感じが、50代になった今読むとなかなか良い。2023/09/20
魔魔男爵
5
全ての美術ミステリはこの作品の一エピソードにしかすぎない究極の美術ミステリ。ミステリ=殺人=拳銃ということで、拳銃と美術ネタが完璧に融合した見事なトリックが出てくる美術ミステリの完成形。美術ファンは他の芸術ファンも兼ることが多いが、音楽ネタでパブロ・カザルスが出てくるのも文句無し!ゴヤを生んだ世界一の美術大国のスペイン人女性が、ニカラグア大統領になる為に美術館を建てようとする話である。展示品購入費用は2億5千万£!主人公のチームは絵を求めてヨーロッパ中を駆け巡る!大金に惹かれ危険な奴等が来る!!2009/07/13
ねんこさん
4
過去作に比べると全体のプロットや主人公のパターン(特定分野のプロ)そのものは大きく変わらないのに、何故か雰囲気が違って感じられた。ミステリー要素が若干強くなったからだろうか。随所で出てくる美術ネタにもう少し詳しければ味わいも変わってくるかもしれない。2015/04/28
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- 和書
- これは謀反か