出版社内容情報
マーロウのオフィスを訪れた女は、消えた愛人の捜索を依頼する。だが、彼はすでに死んだはずで……『ロング・グッドバイ』公認続篇
内容説明
私立探偵フィリップ・マーロウの元に現れたクレアと名乗る黒い瞳のブロンドの女性。マーロウは彼女から、消えた愛人を探してほしいと依頼される。裕福な女性がなぜ自分に依頼をと訝りながら調査を開始するが、愛人は2カ月前に死亡しており、彼女もそれを知っていたことが判明する。問い質すマーロウに、クレアは「先週、生きている彼を見た」と告げ…。チャンドラー『ロング・グッドバイ』の公認続篇!
著者等紹介
ブラック,ベンジャミン[ブラック,ベンジャミン] [Black,Benjamin]
1945年生まれ。英国ブッカー賞作家ジョン・バンヴィルのミステリ執筆時のペンネーム
小鷹信光[コダカノブミツ]
1936年生、早稲田大学英文科卒、ミステリ評論家、翻訳家、作家。編書『夫と妻に捧げる犯罪』スレッサー、『ジャック・リッチーのあの手この手』リッチー 訳書『郵便配達夫はいつも二度ベルを鳴らす』ケイン、『酔いどれの誇り』クラムリー、『マルタの鷹〔改訳決定版〕』ハメット(以上早川書房刊)他多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Shun
32
チャンドラーの「ロング・グッドバイ」の公認続編。そしてこのタイトルは原作者が遺した作品名候補の一つで、これをブッカー賞作家の著者が書き上げた小説が本作。文体もチャンドラーのそれに近くなるよう苦心した様子が窺え、ユーモアを忘れずタフであること、それらはこの作品でも健在。前作にあたる物語で数少ない友と認める男テリーとの哀しい別れがあり、その余韻は本書でも随所に読めて象徴にもなっているギムレットを献じる姿が良い。まさに続編の味わい。(以下作中より引用)「生き続けて学ぶしかない、マーロウ。生き続けて学ぶのだ。」2023/06/20
ブラックジャケット
17
レイモンド・チャンドラーの文体に魅せられる人は多い。ましてフリップ・マーロウのセリフも書けるとなると、成り代わって新作小説を出したい、と手をあげる作家もいるだろう。「ロング・グッドバイ」の続編というアプローチなのだが、定石の事務所を訪れる依頼人から始まる。しかも黒い瞳でブロンドという希有な組み合わせの美女クレア。依頼は、かつての愛人ニコを探すこと。すでに交通事故で死んだいる男だが、謎を追っていく内に、大きな事件が姿を現わす。チャンドラーファン、マーロウマニアを納得させて、エンターテイメントに収める。 2023/08/12
ふみふみ
10
著者のエージェントはチャンドラーの著作権団体の管理者でもあり、その財団公認の「長いお別れ」続編として発表された本書。期待して読み始めたところ、最初の20Pぐらいまでは本家のスタイルに似せて頑張ってるなと感心しましたが、抑えることを知らない諧謔とアイロニーには次第に嫌気がさし、最後は鼻につくを超えて笑えてきたりもしました。そして、ワイズクラックと諧謔がキャラ造形の中核となったこの贋作マーロウに、全く魅力がないのも致命的です。加えて、役回り的にも「長いお別れ」のセンチメンタルなマーロウを更に上回る情けなさで2023/06/15
ニッキー
9
映画を先に見ようかと悩んだが、頑張って本を先に読み終えた。 フィリップ・マーロウと言えば、ロバート・ミッチャムの映画を思い出す。 トレンチコートが似合い、タフな探偵と言うイメージである。この作品は、レイモンド・チャンドラーの作品ではないが、日本語訳の本作も十分にチャンドラーlikeである。2023/09/29
Copper Kettle
4
レイモンド・チャンドラーによる名探偵フィリップ・マーロウ・シリーズの最高傑作と言っても良い「ロング・グッドバイ(長いお別れ)」の続編。作者および翻訳者が良い仕事をして、確かに雰囲気はレイモンド・チャンドラーの小説っぽさ満点。彼の著作権財団も公認することになり、その仕事は報われている。なんでも作者のベンジャミン・ブラックはブッカー賞作家でもあり、将来のノーベル文学賞候補としても名前があがっているジョン・バンヴィルの別名義とのこと。大団円のシーンで初読では納得できない部分が正直あるが...題名の秘密も楽しんだ2025/01/18