内容説明
本書には、レイモンド・チャンドラーが1938年から39年前半にかけて発表した五篇の中短編が収められている。表題作「レイディ・イン・ザ・レイク」は、長篇『湖中の女』の原型となったもの。「ベイシティ・ブルース」もまた、同長篇に組み入れられた。「赤い風」はのちに主人公がフィリップ・マーロウに書き換えられたバージョンでお届けする。伝説のヒーロー誕生前夜の熱気を伝える画期的全集第3巻。
著者等紹介
チャンドラー,レイモンド[チャンドラー,レイモンド][Chandler,Raymond]
1888年シカゴ生まれ。1933年に短篇「ゆすり屋は撃たない」で作家デビューを飾る。1939年には処女長篇『大いなる眠り』を発表。1953年に発表した『長いお別れ(ロング・グッドバイ)』で、アメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞最優秀長篇賞に輝いた。1959年没。享年70(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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bapaksejahtera
10
今回は1938年から翌年にかけての多分著者盛期の作品。①赤い風②黄色いキング③ベイシティ・ブルース④レイディ・イン・ザ・レイク⑤真珠は困りもの の5編である。今回の中では真珠の首飾り盗難を題材とする点で⑤と似ている④「赤い風」が、流れるような進行と簡明さ、及びエスプリに溢れた結末といい最も気に入った。②で同じ創元版ではhotel detectiveを「探偵」と訳していたが、此の早川では「警備員」。ともあれこの作品も良い。③④も可であるが、⑤のユーモアには私のレベルでは理解に到達しなかった。2022/01/03
ぶうたん
8
短篇全集の3巻。短篇じゃなくて中篇集だな。年代的には長篇に移行する直前のようである。読むとやはり長篇型の作家なのかな、と言う印象が強い。読んでいると主人公と視点の一致するプライベートアイを地で行くような趣きだが、独特でハードボイルドに慣れないせいかストーリーが追いづらかった。それに巻頭の作品で特に強く感じたのが修飾語の多さ。何かを表現するのに必ず例えを入れるのはパロディみたいだった。そんなこんなで心の底から楽しむところまで行けなかったのは修行が足りないせいです。すみません。2023/03/21
ドウ
8
チャンドラー短編集の第3弾。『湖中の女』を読む前に元々の短編版を読んでおこうかと。既に文体はほぼ完成されていて、後は主人公がフィリップ・マーロウを名乗るかどうか、という所に来ている。一方で『真珠は困りもの』のような、作品の幅を広げようとするような意欲作も収録。収められた5作の中では、一匹狼的な主人公が多い中で相棒が登場する『ベイシティ・ブルース』が特にお気に入り。ただ今書いていて気付いてしまいましたが、『ベイシティ・ブルース』と『真珠は困りもの』は、文体がコミカルかどうか以外、話の筋がほぼ一緒ですね。2020/03/27
DEE
7
後の「水底の女」となる「レイディ・イン・ザ・レイク」を含む5編からなる短編集。 山奥の湖の桟橋で、沈んだ女の死体を見つける象徴的なシーンはこの時から現在。でも主人公はまだマーロウを名乗っていない。 マーロウが初めて出てくる「赤い風」がよかった。2019/05/22
べっちー
3
この短編集も長編の元になった作品が多々、それにしてもウィスキーが飲みたくなる2023/09/20