感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kiyoshi Utsugi
32
執筆活動40周年記念作品とのことです。 ニュー・ブラッドフォードという小さな町で男二人、女一人の三人組によって、アズテック製紙会社の全社員に支払う給料25000ドルが強奪されます。 三人組の仲間であったアズテック製紙会社の帳簿係は仲間割れで殺害されます。 すぐに事件は知られることになり、街は閉鎖されます。 その三人組は更に町の警察官であるウェズリー・マローンの家に押し込み娘を人質にします。 娘を人質に取られ窮地に陥ったマローンが、無事に娘を取り戻すことが出来るのか… 途中から面白くなって、引き込まれます。2022/04/04
Tetchy
21
全く従来のクイーン作品とは趣も文体も味わいも違う作品だ。テイストとしてはハメットやチャンドラーが書いた冷酷無比な悪党の登場するハードボイルドを感じさせる。本書はクイーン作家生活40周年を記念して書かれた作品だが、晩年のクイーン作品の多くがそうであったように、本書もまた他の作家の手によるクイーン名義の作品だと思っていた。この作品にクイーンの端正なロジックやサプライズは一切ないからだ。クイーン=本格という図式が強く根付いているため、本書でもそれを期待してしまった。その先入観が強すぎて本書の世界に浸れなかった。2012/12/26
タッキー
12
クイーンの作家活動40周年の記念作品。ミステリー色はなく、クイーンとしては異色のストーリー。三人の強盗が奪った金を隠すため、警官の家に押し入り警官に金を預けて、代わりに警官の娘を拉致して逃亡。そこから始まるサスペンスもので、次々とストーリーが展開早く動いていき、次どうなるか、先が気になって楽しく読めました。まるで映画を観ているようで、面白かったです。2020/06/23
Jimmy
6
クイーン40周年の記念作品だそうだが、何をトチ狂ってこんな作品を、というクイーンファンには絶対に手を出すな!と警告したい作品。どんなにガイドブックがこの問題作を持ち上げようとしても、騙されちゃダメ、と思うけどなぁ。だって主人公の人間描写・造型だって薄いじゃん。2022/05/13
浅木原
6
末期のノンシリーズ長編で、本格要素のないハリウッド映画的ハードボイルド・サスペンス。そういうものとしての出来が云々より、クイーンが作家生活40周年に「この国および海外の読者に捧げる」という献辞つきでこういう作品を書いたこと自体が興味深い。主人公の妻が彼を〝ローニー〟と呼び続ける様を、クイーンが本格ミステリの神様であるが故に、読者もクイーン自身も本格ミステリという呪縛から逃れられないという悲哀と重ね合わせて読んでしまう。クイーンは神様であるが故に自身を呪縛し、読者を呪縛し、今も本格を呪縛し続けるのだ。2017/04/21