出版社内容情報
18世紀のウィーンにチェスを指す自動人形(オートマトン)が現れた。あまりに優れた性能のためたちまちヨーロッパ中で話題になるが、その真相は?
内容説明
1770年、ウィーン宮廷。官吏ケンペレンによる前代未聞の発明、チェスを指す自動人形がベールを脱いだ。中東風の衣装をまとい「トルコ人」と呼ばれた彼は人の手から手に渡り、欧米各地で興行が催される。チャンピオンすら破る腕前に観客たちは驚き、困惑した。本当に機械が「思考」しているのか?ナポレオンとも対局しエドガー・アラン・ポーがその秘密に挑んだ、知られざる「AIの祖先」の世にも数奇な命運と真相。
目次
第1章 クイーンズ・ギャンビット拝命
第2章 タークのオープニング
第3章 最も魅惑的な仕掛け
第4章 独創的な装置と見えない力
第5章 言葉と理性の夢
第6章 想像力の冒険
第7章 皇帝と王子
第8章 知能の領域
第9章 アメリカの木の戦士
第10章 終盤戦
第11章 タークの秘密
第12章 ターク対ディープ・ブルー
著者等紹介
スタンデージ,トム[スタンデージ,トム] [Standage,Tom]
ジャーナリスト・作家。1969年生まれ、オックスフォード大学卒。英『エコノミスト』誌副編集長。テクノロジー、科学、ビジネスを歴史の観点から論じることを専門とし、『ニューヨーク・タイムズ』『ガーディアン』『ワイアード』などに寄稿する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こまごめ
15
元祖チェス指し人形タークを巡る数奇な運命。元々はマリア・テレジアを喜ばせるためにケンペリンという役人が作り上げたからくり人形(オートマトン)だったが、からくり人形のしくみを誰も説明出来ずにヨーロッパ各地でチェスを指す興行を行い大盛況だったそうです。2024/11/18
Cinita
14
かつて欧米に旋風を巻き起こしたチェスを指し自動人形「ターク」のノンフィクション。18世紀当時の自動人形ブームから蒸気機関への技術史も面白いし、巡業の過程でバベッジに「知性を持った機械」というビジョンを与え、ポーに「魅力的な謎」と「手がかりから論理的に真相を導く」思考を与えたというのもロマンがある。終盤、どのように機械に知性の存在を認めるのか、知性とはいったい何なのか? といったところにまで踏み込んでいくのも、歴史がAI黎明期の現在に接続されるようで非常にワクワクしました。名著。2025/01/24
緋莢
14
1769年。ハンガリーの文官であるヴォルフガング・フォン・ケンペレンは、フランス人奇術師の舞台を見たことが きっかけで、チェスを指す人形を作ることになった。その人形は歴史上最も有名なオートマトンになり ベンジャミン・フランクリン、エカテリーナ大帝、ナポレオン・ボナパルト、チャールズ・バベッジ、エドガー・アラン・ポーらとの接点を持って…『ヴィクトリア時代のインターネット』著者の作品ということで、手に取りました。 (続く2024/12/05
garth
9
ジーン・ウルフの「素晴らしき真鍮自動チェス機械」(若島正編『モーフィー時計の午前零時』所収)を訳させていただいた手前、読まないわけにはいかず。2025/01/11
sataka
5
タイトルに興味を惹かれていたので文庫化を機に購入。18世紀に機械がチェスを指せるはずもないので、技術ではなく奇術の範疇というオチは予想できた。タークの80年強の軌跡を辿りつつ、当時の人々の仮説を退けていくことで、徐々に真相に迫っていく構成はミステリ的で流麗。そうでなくても、膨大な資料に基づいたオートマトン史として読んでも面白かった。ラストで現代のAIに話を繋げるのは強引さを感じたが、それはご愛敬か。2024/12/04