出版社内容情報
万博間近の19世紀末シカゴ。欲望うごめく大都会に「殺人ホテル」を構える猟奇殺人犯が潜んでいた。『悪魔と博覧会』復刊文庫化
内容説明
19世紀末シカゴ。建築家ダニエル・バーナムは史上最大規模の万国博覧会を成功させるべく邁進する。だが、建設ラッシュに沸く街の片隅では、後に「アメリカ最初のシリアルキラー」と呼ばれるH・H・ホームズの手による、おぞましい連続猟奇殺人が起きていた…。新興国アメリカの光と闇を描き世界的ベストセラーとなった、エドガー賞(犯罪実話部門)受賞の傑作ノンフィクション。『悪魔と博覧会』改題。
目次
プロローグ オリンピック号の船上で 1912年
第1部 凍れる音楽 シカゴ 1890‐91年
第2部 激しい闘い シカゴ 1891‐93年
第3部 ホワイトシティ 1893年5月‐10月
第4部 露見する犯罪 1895年
エピローグ 最後の交差
著者等紹介
ラーソン,エリック[ラーソン,エリック] [Larson,Erik]
1954年生まれ。アメリカのジャーナリスト、ノンフィクション作家。ペンシルベニア大学でロシアの歴史・言語・文学を学び、コロンビア大学でジャーナリズムの修士号を取得。これまでの著書8冊のうち6冊がニューヨーク・タイムズ・ベストセラー入りを果たしている。マンハッタン在住
野中邦子[ノナカクニコ]
出版社勤務を経て、現在翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
121
アメリカ連続殺人史でH・H・ホームズは有名だが、彼が殺しを重ねていた19世紀末のシカゴでは万博開催の準備が進んでいた。国と市の威信をかけた万博成功のため政治家や建築家が必死に努力する一方で、殺人を趣味とする男が何の咎めも受けず女を殺し続けたのだ。両者は全く無関係だったが、あまりに落差の激しい光と影のコントラストが同時進行していた現実には思わずめまいがする。その後のアメリカ史においてシカゴ万博は美しく装われた表の象徴であり、ホームズの犯罪は暗い闇の水脈を生み出した。正常と狂気が同居する国の根源を見た思いだ。2024/08/24
maja
23
1893年、食肉産業の都市で知られるシカゴで大規模な万国博覧会が開催された。開催地誘致から開催決定、ハレの日に向かい準備するバーナムを始めとする様々な関係者たちの混沌。時を同じくしてシカゴに降り立つ若い医者。建設ラッシュに沸き、大勢の人々が引き寄せられてくる19世紀末当地の光と闇が交錯するノンフィクションでようやく読み終えた。博覧会場の建設から開催、そして関わった建築家たちのその後が丹念に描かれる。並行するH.H.ホームズ事件と顛末。ホームズの異様さが怖ろしかった。2024/11/27
Porco
22
よく聞くフレーズで「誰だって、自分の人生という物語の主人公なんだ」というものがあるが、これは言い変えれば「誰だって、誰かの人生という物語の出演者なんだ」ということである。本作はあくまで万博を作り上げたダニエルやシリアルキラーホームズが主役であるが、名もなき建設労働者や若く全能感に満ち溢れた乙女たちなど数多の人が入り混じり、万博という熱狂の坩堝で動く主役たちの物語で編まれたシカゴの町は、それを俯瞰している神の視点である読者から見ても、題名の割にショッキングな描写が薄くても熱を感じてしまうものだった。2024/09/04
ももいろ☆モンゴリラン
5
「間に合わない」「余計な横やり入れやがって」「足りない」「想像と違う」「開会式明日ってマ?」「市長ォ!!」「節約して」「だ か ら 黙 っ て ろ っ て ! !」現代の世界規模のイベント責任者たちの嘆きかと思えば、どっこい100年以上前から響いてきた。景観設計のオームステッドがなんと可哀想なことか(植えた端から踏みつけられる)…。並行して暗躍するH・H・ホームズのサイコパス殺人紀行もどんどん箍が外れていって、異なるストレスを同時に味わえる誠に稀有な作品となっております。2024/07/24
劇団SF喫茶 週末営業
4
1893年のシカゴ万博は後の都市計画やテーマパーク設計に影響を与えたようだ。アメリカの威信をかけたこの万博をわずか2年で設計、建築することになった建築家バーナム。その奮闘が無茶振りお仕事モノとして面白い。さらに同じ頃、万博の近くにはアメリカ最初の連続殺人鬼HHホームズが潜んでおり、、、とあれば、読む前は大傑作の予感しかなかったが案外そうでもなかった。二つの話は全然交わらないからだ。しかし、建築家と殺人鬼を相似形として描いており、万博と連続殺人が共通の時代精神から来るものだという感じにしたかったのだろう。2025/05/27