出版社内容情報
ある先住民の死が二十数人に及ぶ連続怪死事件へと広がる。石油利権と人種差別が絡み合う歴史の暗部に迫る衝撃のノンフィクション
内容説明
1920年代のアメリカ・オクラホマ州。先住民のオセージ族が「花殺しの月」と呼ぶ5月のある夜、2件の殺人が起きる。それはオセージ族とその関係者二十数人が犠牲となる連続怪死事件の幕開けだった。特別捜査官のトム・ホワイトが調査を開始すると、石油利権と人種差別が複雑に絡み合う巨大な陰謀が明らかになってきて―。FBI誕生の契機となった事件を丹念に描き、アメリカ探偵作家クラブ賞を受賞した傑作。映画化原作。
著者等紹介
グラン,デイヴィッド[グラン,デイヴィッド] [Grann,David]
アメリカのジャーナリスト。1967年、ニューヨーク出身。“ニューヨーカー”のスタッフ・ライターを務める。ジョージ・ポーク賞ほか受賞歴多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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燃えつきた棒
35
20世紀初頭、オクラホマで暮らす先住民オセージ族の60人以上が命を奪われた「オセージ族連続怪死事件」を描いたマーティン・スコセッシ監督の映画『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』の原作ノンフィクション。 1921年、オセージ族が「花殺し月」(フラワー・キリング・ムーン)と呼ぶ五月、オセージ族居住地に住むモリーの姉アナが失踪する。 さらに、その後オセージ族住民が被害者の殺人事件や変死が頻発する。/ 1890年代、オセージ族の保留地の地下で米国最大の石油層が発見され、彼らは巨額の富を手にした。→2023/11/23
バズリクソンズ
26
1920年代アメリカという国で、いかに白人が権力を持っていて自由に行使し、ネイティブアメリカンを迫害し続けてきたかの記録がここにある。隠蔽、操作、虚偽など茶飯事で石油の利権を奪う為に何十人というオセージ族の人民を殺戮、当時明るみにならなかったのは、司法、行政の立場の人間も犯罪に加担して金を手にしていた事による。強欲と人種差別に塗れたアメリカの黒歴史に怒りがおさまらない。これほどまで先祖の命を奪われても、オセージ族の現代の子孫たちは前向きに生きる姿に模範となる人間性を垣間見る。この事件も氷山の一角に過ぎない2025/08/15
d3
26
スコセッシ監督作品は鑑賞したあとで原作が読みたくなる。本作と同じく早川書房から出版されている「アイリッシュマン」のときもそうだった。長編の映画でたっぷりと描かれた世界を「もっと知りたい」と渇望してしまうからだ。そして原作が映画にほとんど反映されていることに驚愕する。 ネイティブ・アメリカンのオセージ族は5月を「花殺しの月」と呼ぶ。春に咲いた花々を覆い隠すように丈の長い草が生え、花を枯らしていくことを指している。 それはまるで大地に芽吹いていた文化を数と力で覆い隠した白人たちに似ているようだ。2023/10/30
Satoshi
13
マーティン・スコセッシ監督最新作の原作。映画は長すぎること以外は文句無しの傑作だった。原作はFBI捜査官に焦点をあてたドキュメント。オセージ族が石油の権益を得る経緯や表に出ていない殺人の記録、フーヴァーの思惑などがよく分かり、映画で不足した情報を補えた。映画の締めがラジオ劇での顛末説明とした理由が本書によりクリアになった。2023/11/05
カツ
12
映画の原作本なので小説かと思っていたら骨太のノンフィクションだった。石油という利権の為に白人という侵略者がネイティブから土地・自由更には命まで搾取する。現在でもそうだろうが人種差別が過ぎる。米国の歴史の闇に光を当てた力作だと思う。映画も観たくなった。ちなみにFBI創設のきっかけとなった事件との事。2024/03/31