出版社内容情報
“できない”ことの証明が豊かな成果を産む――予備知識なしで数学の神秘に触れる一冊
内容説明
数学・物理の世界では、「できない」という否定的な命題の証明が、実は新たな視野を切りひらく不可欠の契機となる。本書は車の修理スケジュール、名刺の並び替え、選挙方式など身近なものから、現代数学、宇宙物理まで幅広く題材をとりあげながら、「ハイゼンベルクの不確定性原理」「ゲーデルの不完全性定理」「アローの不可能性定理」という三大“できない”証明を検証。数式をなるべく排した、平易でユーモラスな解説書。
目次
第1部 宇宙の記述(万物の尺度;現実との整合性;すべてのもの、大なるも、小なるも)
第2部 不完全な道具箱(不可能な作図;数学のホープ・ダイヤモンド;その二つ、決して見えず;論理にさえ限界がある;空間と時間―これで全部?)
第3部 情報―ゴルディロックスのジレンマ(マーフィーの法則;秩序なき宇宙;宇宙の原材料)
第4部 到達できないユートピア(基盤の亀裂;密談の部屋;鏡のなかにおぼろに)
著者等紹介
スタイン,ジェイムズ・D.[スタイン,ジェイムズD.][Stein,James D.]
カリフォルニア州立大学ロングビーチ校に数学教授として長年在職したほか、カリフォルニア州およびテキサス州の数学教育顧問を務める。月面着陸プロジェクトのメンバーや株式トレーダーとして働いた経験ももつ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Fondsaule
24
★★★★☆ ハイゼンベルクの不確定性原理、ゲーデルの不完全性定理、アローの不可能性定理から始まり、様々な現代数学・物理学の成果を解説してくれる。一般向けにわかりやすく書いてあるけれど、高校数学と近代物理学系のトピックの知識がないと何が書いてあるかわからないと思う。系統立てて進むのではなく、あちこち話が飛ぶのが難点といえば難点。2020/04/01
roughfractus02
9
完全民主主義を満たす社会的選択関数はないという証明(アローの不可能性)、位置と運動量を用いて決定論的な「ラプラスの悪魔」の存在を否定する証明(ハイゼンベルクの不確定性)、自然数論では真だが証明できない命題があることの証明(ゲーデルの不完全性)。以上三者が同じテーマの高橋昌一郎『理性の限界』と本書の違いは、数学の証明の特異な性質に注目する点だ。不可能な理由を命題の真偽の判断と公理構造の複雑性で区別し、後者なら決定不可能な命題の公理系をどこまで複雑に記述可能かまたは不可能かを明らかにする過程が証明と呼ばれる。2018/02/18
権現
9
「たまにはアウェーな領域のことも勉強せねば!」と思って手に取った一冊。数学という分野が千年単位の永きにわたって世界の真理を解き明かし、あるいは「解き明かせないことを証明した」歴史が綴られた一冊。宇宙を数学的に捉える人の目には、抽象的とも言える美しさでさえも数学的に解明できるという発想がある。私たちがわからないこととは、単にその解法を掴めていないというだけのことなのか? 数学の世界はどこまでも平等なんやなぁ。2017/05/26
夜間飛行
9
この宇宙に人間が絶対に知り得ない領域があるということは、20世紀の大発見だろう。例えば、ビックバン以前の出来事やビックバンの影響外の空間について我々は観測できないどころか、その存在を知ることもできないらしい。同じことはミクロの世界についてもいえる。それにしてもなぜ、知り得ない世界があるということをこんなに奇妙に感じてしまうのだろう? 少し考えれば、宇宙について何でもわかるという方が余程おかしなことだと気づくのだが。本書の題名からして、何かを「知る」ことそのものに対して、もっと問いを向け考察してほしかった。2013/02/21
魔魔男爵
5
本書のベストセリフ「神にかんする問題に突き進む能力をもつ人たちが、エイズや鳥インフルエンザの治療法の発見に力を注げば、社会はもっとよい場所になると思う」神学哲学寄りの思考者を揶揄し、数学的科学的思考をマンセーする良書。構成力書き方ギャグがヘタクソなので、やや読み辛いが、三大決定不可能問題だけではなく、角の三等分問題からNP問題まで、有名な話題はほぼ全て出て来ます。量子力学や超ひも理論やマルチユニバースの話題も有り(M理論は出て来ない)。美的価値を計算する(数理美学?w)ネタはバカ受け。愛も数学する野望? 2013/02/23




