内容説明
第二次大戦は航空機が組織的に用いられた史上初の戦争である。だが、運用方法については実戦のなかでさまざまに試行錯誤が繰り返された。それはイギリス・ドイツ両空軍にとっても例外ではなかった。1940年夏、圧倒的な航空戦力を投入しながらも勝機を逸したドイツ空軍と、戦力的に劣勢ながらそれを退けたイギリス空軍の違いはなにか。イギリス本土上空を舞台にした航空決戦の全貌を、あますところなく描いた戦記の決定版。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
イプシロン
24
戦争は錯誤の連続といわれている。その錯誤がプロパガンダとして利用されることに恐怖を覚えた。バトル・オブ・ブリテンにおいては報復爆撃を生んだロンドン誤爆がその例だ。錯誤をプロパガンダとして使用する終局に「ヒロシマ」があったという著者の見解は実に鋭い。本書には記されてないが、ナチスの場合、フライブルク事件(自国民を誤爆したのを他国のせいにして無差別爆撃を正当化した)が典型的だ。もっともフライブルク事件は連合国側もプロパガンダで自己正当化に使ったのだが……。つまり、騙されない賢明さこそ戦争の抑止力なのだろう。2018/12/20
知降 星人
2
ドイツ空軍は指導部の判断力欠如で自ら墓穴を掘り、イギリス空軍はさまざまな失敗をカバーする、柔軟な思考力をもった指導スタッフに恵まれていたことが、勝敗の分かれ目になった。2019/06/08
ソノダケン
2
「バトル・オブ・ブリテン」で、イギリス人はさほど一致団結しなかった。航空戦はエリート同士の戦争とみなされた。著者はイギリスの勝因を、科学者たちの発言権にみる。ドイツ科学者が将軍にお説教する図など想像できないと。ヒトラーはロンドン爆撃を禁じていたが、敵がベルリン爆撃をやめないので禁令をゆるめる。英軍首脳は安堵した。ロンドンは爆弾をペロリと呑みこむほど適応力のある都市だった。そもそもドイツ軍は対イギリス戦略を策定していなかった。あんがい行儀のいい連中だった。2015/01/26
tsuyoshi1_48
2
下巻はいよいよ戦闘を時系列に詳述。渡洋攻撃を前提としないルフトバッフェは、それでもなお英国空軍戦闘機隊を壊滅の危機に追い込む。しかし戦略目標の錯誤から、勝機を逸し、やがて上陸作戦の季節は過ぎる。。。戦記物すべてに言えることですが、単なる戦争の記録でなく、様々な意思決定に活かすことのできる示唆を含んでいます。2010/12/16
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