内容説明
第二次大戦当初、ナチス・ドイツは、瞬く間にヨーロッパ大陸西部を蹂躙した。勢いにのるドイツは無敵を誇る空軍力をイギリスへと向ける。ドイツ軍の航空戦力はイギリス軍をはるかに凌駕していたが、予想に反し決着は容易にはつかなかった。逆にドイツ空軍は、徐々に戦力を損耗させられていく…いかにしてイギリス空軍は不利な状況を戦い抜いたのか。歴史的航空戦の真実を、巨匠レン・デイトンが鋭い視点で描破した傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
イプシロン
20
いかなる形態の戦争にせよ(本書の場合「英国の戦い」という空中戦が題材にされているが)、詰まるところ兵器の質や威力ではなく政治指導者や軍事指導者の人格とその手腕によって趨勢がほぼ決まってしまうことを露に描きだしている名著。言い換えるなら、戦争を起さない政府を持つことこそ最も賢明な道であることが窺える一冊。戦争を起こし行う根本は人間であり、人間の考え方だということを暗に強く訴えいるといって過言はないだろう。
ソノダケン
2
レジナルド・ミッチェルが設計した「スピットファイア」は、失敗機の名前を使い回したものだが、ミッチェルは気にしなかった。命名など愚劣な行為と思っていた。名付けにムダにこだわる日本軍とえらい違いだ。イギリスでレーダー開発が成功したのは、周囲を海に囲まれていることと、妥協しながら進歩をはかる気質のおかげ。「動けばOK」の精神で技術競争にのぞんだ。ドイツは空軍も電撃戦に凝り固まり、迎撃の思想がなく、有機的なレーダー防衛を組織できなかった。2015/01/21
tsuyoshi1_48
2
バトル・オブ・ブリテンに関連する書物が読みたくなり、10年ぶりに書架より引っ張り出してきました。バトル・オブ・ブリテンは、航空決戦という新たな戦闘形態の顕現であり、上巻ではそのパラダイムシフトを理解するのに必須の背景知識(両軍の体制、航空技術、レーダーの開発)が丁寧に説明されています。図も豊富でお好きな方は楽しめるかと思います。2010/12/13