内容説明
少女の頃から、生命への興味抑えがたい私だった。長じて生物学を専攻しアメリカに留学すると、DNAの二重らせん構造を初めとする諸発見に、分子生物学界はわきにわいていた。その興奮にじかに触れ、私はすっかり魅せられてしまっていた…「生命とは何か」と今も問いつづける著者が、生命科学者となるまでの自己成長をふり返り、学究の溢れかえるほどの喜びを綴る珠玉の長篇エッセイ。日本エッセイストクラブ賞受賞。
目次
いのちのざわめき
科学にあこがれて
生命科学の道へ
育まれる心
知を愛する人
エピローグ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
jam
52
植物学者を父に持ち、松山で広島の原子雲を見た少女が、生命科学者になるまでの自叙伝。生命を司る遺伝子の理を求め渡米し、乏しい器具で実験を繰り返し、見果てぬ夢を追う日々が瑞々しい文章で綴られる。20年ぶりの再読だが、生命科学の黎明期、「人はどこから来たのか」という問いへ、幾星霜、連綿と命を繋いだ遺伝子に答えを求める科学者の思いは些かも色褪せない。著者はその後、長い闘病生活に入り「科学は私を救ってくれなかったが、科学への愛情は増しこそすれ減らなかった」と書く。この身を創る生命の奇跡が、等しく未来なのだと思う。2016/02/29
Lee Dragon
26
中村桂子さんと間違えてこの本を手に取ったのですが、良書でした。 「教育とは全人格でなされるもの」という表現があるが、なるほどその通りで、大学の先生たちと話してると好奇心を幾つになっても失っていない、寧ろ自分よりも好奇心旺盛であると常に感じてきた。 そんな人達に大いなる魅力を感じ、世界には面白いことが沢山あると知った。現象は変わらないのに、学説は次々に変わり、大学で学んだことも実は間違いでしたという日が来るだろう。 でも、学んだことが無駄だったとは思わない。確実に人生が豊かになり、教訓として今も生きている。2020/07/19
tom
12
以前から気になっていた本。幼少期からアメリカ留学を終えるまでの生活をさらりと書いている。でも、あの時代にアメリカに行き、生命科学の熱い現場を体験した人にだけ書くことができる年代記。こんな風にして(おまけに妊娠中に)時代の先端を走ることができた人がいるのだと思うと、かなりうらやましい気持ちになってしまう。でも、ほんとうに、私にはできない努力をしたのだろうなあと、ひたすら尊敬してしまった。2016/03/12
ふうふう
8
★★★☆☆コロンビア大学の大学院時代のお話がキラキラキラキラしている。苦労話さえも。『学会発表のためデトロイト空港に到着した私。』『ニューヨーク近代美術館の中庭で。』このような文章の添えられた写真たちの美人ぶりに、うひゃ〜となる。2022/05/06
kuriko
3
おもしろかった!高校の生物の授業で習ったことが蘇る。二重らせんなんて、つい最近(?)発見されてたんだなぁと、いまさら思った。実験に次ぐ実験に次ぐ実験!楽しそうで、辛そうで、楽しそう。青春よねーー。情熱って言葉も思い出した。是非朝ドラで観てみたい!!2024/09/26