内容説明
生命とは何か。親から生を受け、子へと伝えていく私たちは、どこから来てどこへ行くのか―これらの問いに、最新の分子生物学は遺伝子のふるまいから解明を試みる。その結果、生命は驚くべき矛盾に満ちていることがわかった。精密だが遊びがあり、合理的だが無駄がある。しかも、あり合わせの部品を使いポップアート方式で組み立てられているのだ。生命の生存戦略を通して、新たな生命像を語る現代分子生物学の到達点。
目次
1 プロローグ―分子生物学者の見る生命
2 遺伝子―研究につれて現れてきた新しい姿
3 多様だが共通、共通だが多様
4 特徴ある二つの世界
5 安定だが変化し、変化するが安定
6 巧妙、精密だが遊びがある―調節
7 偶然と必然
8 合理的だがムダがある
9 精巧な設計図だがポップアート方式
10 正常と異常に明確な境はない
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
郷音
2
講演のために再読。この本を初めて読んだのは中学生の頃で専門用語が多くて半分も理解できなかった。今読むとそうでもないのだけど…。あの頃、「人間とは何か」ということに興味を持ち始め、この本をきっかけに進化や遺伝子の分野からその答えを探したいと思ったのを懐かしく思い出した。2014/12/13
123456789wanko
2
発売が1996年と少し古いが、遺伝子を分子生物学の手法で解析した結果を分かりやすく解説。生物のしなやかさがよくわかる。2011/11/18
ソフトバンク
0
アメブロに書きました http://ameblo.jp/softank/entry-11545654519.html2013/06/01
ミニジロー
0
「生」は夥しい死とムダに支えられているというのが理解できる。こうした生物の進化の歴史はたくましさの一方で、自然に対する根源的な不安となっているようにさえ感じられる。そして、人間の効率や制御への飽くなき欲望にもつながっているようでもある。「われわれは『速く、たくさんに』というストラテジーを放棄して、代わりに『ゆっくり、安定に』を採用した生物」という一節には、自然の中のヒトだけでなく社会の中の人間にも示唆的でなかろうか?2016/11/27
mrymy_k
0
1980~1990年に執筆され、1996年に加筆改訂され文庫化された本書。挿絵がかわいい。テーマを遺伝・進化にしぼってもう6、7冊は読んだかな。1冊を通してある程度理解できるようになってきた。多細胞生物のDNAの複製・発現では、イメージしていたよりも大きなゆらぎ・遊びがあるということ、それによって続いて行きやすくなっていることを読んで、今の社会とリンクしているように感じた。本書出版と同時期に生まれ30年近くを生きている私には、社会がゆらぎ・遊びを許容する方向に変化してきたように見える。2021/08/09