内容説明
ダーウィン進化論の登場以来、われわれの生命観は劇的に変わった。だがその一方で、ダーウィンの説ほど誤解され、誤用されてきた理論もない。それはなぜなのか。現代進化生物学の旗手グールドは、ダーウィンの原理を出発点としながら科学と社会、文化全般のありように新たな光をあてる。生命への限りない愛情と人類の未来への希望を巧みな語り口で綴る、グールド進化論の原点というべきエッセイシリーズ第1作。
目次
第1部 ダーウィン小論
第2部 ヒトの進化
第3部 風変わりな生物たちと進化の類例
第4部 生物進化のパターンと区切り
第5部 地球の科学
第6部 大きさと形―教会・脳・惑星
第7部 社会における科学―歴史的考察
第8部 人間性の科学と政治
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- 評価
COSMOS本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
409
ダーウィンにはじまり、それ以降の進化に関する論考を検証する高水準の科学エッセイ。著者は、この分野では名高いグールド。ダーウィンは、自己のいわゆる進化論の考えを公表するのに21年間もためらったそうだ。なぜなら、彼の考えは唯物論そのものであったから。それは、神が作り給うた6000年の人類史という聖書の世界観と真っ向から対立する。しかし、数々の証拠は唯物論(彼自身がそう語ったわけではないが)の正しさを示している。また、ダーウィンは進化の恣意性にも驚かざるを得なかった。「正しい方向性」などそこにはなかったからだ。2019/10/25
奏市
18
難しい部分もあり文章量も多いサイエンス・エッセイで読むのに疲れたが、面白かった。進化学に限らず、科学史と科学論、科学と社会もテーマ。二足歩行よりも脳の増大化が先だったという従来の定説に反論した主要な一人が『共産党宣言』のエンゲルスというのが面白い。手による「労働」を重要視する点で論旨が繋がるのか。「理論が変更されるのは、新しい発見から生ずる単なる派生的な結果としてではなく、その時代の社会的・政治的な力に影響を受けた創造力の働きの結果としてである。」イデオロギーが関係しない科学はないとは納得性がある。2020/05/04
ラウリスタ~
11
優れた科学啓蒙書。進化はアメーバから始まり人間を頂点とする一直線の「進歩史」ではない(そう誤解されたことで、優生学などに悪用)。ダーウィンはビーグル号の博物学者ではない!実は部下と個人的な関わりを持つことを禁じられ5年の航海を指揮する艦長が、遺伝性の狂気に囚われないために、(同階級同年代の)貴族の話し相手として連れて行った。この艦長が生物デザインに見る神の存在証明を食卓で語り続けた(艦長は船上では神なので口答えできない)ことが、下船後に反作用として進化論執筆に向かわせたのでは仮説。エッセイ集なので重複あり2021/03/27
Hiroshi
9
古生物学出身の進化学者である著者の1974年1月よりアメリカ自然死博物館の広報誌「ナチュラル・ヒストリー」に連載されたエッセイを纏めたもの。ジョンソンの偉大な社会計画とベトナム戦争の結果インフレ、スタグフレーションが起こり、アメリカ社会が変わり出す時期に書かれている。悪夢の優生学に類似する遺伝決定論が再び現れており、著者は否定している。主題は①自然の歴史(進化学)、②自然の歴史の認識史(科学史と科学論)、③自然認識と人間観(科学と社会)だ。全33章からなる。ダーウィン以来とは、最高の被造物を否定する事だ。2022/02/25
misui
8
初グールド。雑に読んでしまったがそれでも興味深いトピックが拾えたし、進化論への理解が深まる。やけに政治的な記述が多い点は、そもそも科学とは政治的なものなのだという主張によって了解される。まあ自分は周期ゼミやr-K戦略説についての章が素直に面白かった。2018/03/25
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- 和書
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