内容説明
1937年、モスクワ演劇祭に向かう途中に寄ったパリで、子供時代の親友ジュリアから連絡があった。「あなたにしてもらいたい大事なことがあるの」名門に生まれ、ウィーンで医学を学んでいたジュリアが今、反ナチのレジスタンス運動の資金5万ドルをベルリンまで運んでほしいと言う。彼女の頼みを断わるなど思いもよらず、列車に乗りこむが…。熾烈に生きた一人の女性との交流を綴った表題作をはじめ、ハードボイルド作家ダシール・ハメットとの生活、ニューオリンズの親戚や芝居の世界の人々をめぐる回想をとおして、劇作家リリアン・ヘルマンの人生が鮮やかに浮びあがる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
小説大好き
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特に表題作について、今年読んだ本の中でも一二を争うほど好きです。著者の人間性についてはあまりに喧嘩っ早いのではないかと疑問に感じてしまう箇所も多々ありましたが、そんなことよりとにかく文章力が凄いです。文章全体の構成に拘っているわけではなく、あくまで淡々とありのままに物事を書いているにもかかわらず、社会の一面を切り取る的確性や言い回しの多彩さなど、少なくとも近年読んだ本の中では群を抜いていると感じました。また、ナチス政権下という過酷な時代の渦中にあっても当然のように信念を曲げない強かさにも感銘を受けました。2022/11/19
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