出版社内容情報
人より何十倍も遅い時間の中で生きる姉との葛藤を描く「キャビン方程式」など、社会の多数派と少数派が共存を試みる7つの物語。
【目次】
内容説明
他人よりも時間の流れが何十倍も遅い世界を生きている姉から届いた3年ぶりの手紙には、観覧車にまつわる怪談について調べてくれ、と記されていたが…「キャビン方程式」。ダンスのレッスンを希望するマリは、芸術を目で見て楽しむことができない特殊な体質のはずなのだが…彼女が踊る目的は?「マリのダンス」。社会の多数派とそうなれない者がお互いに理解と共存を試みる、彼女たちの選択7篇。
著者等紹介
キムチョヨプ[キムチョヨプ]
1993年生まれ。浦項(ポハン)工科大学化学科を卒業し、同大大学院で生化学修士号を取得。在学中の2017年、第2回韓国科学文学賞中短編部門にて「館内紛失」で大賞、「わたしたちが光の速さで進めないなら」で佳作を受賞し、作家としての活動をスタート
カンバンファ[カンバンファ]
岡山県倉敷市生、翻訳家、翻訳講師
ユンジヨン[ユンジヨン]
1982年生、翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Shun
29
「わたしたちが光の速さで進めないなら」著者のキム・チョヨプによる短編集第二弾。前作の雰囲気を継承したSFの世界が堪能できます。一個人が持っている感覚や自分以外の世界に対して抱く認識について、人は誰しも自分の見て感じている感覚が正しいと思いがちになる。けれどその思い込みが他人と衝突する原因だったり分かり合えないという感覚に陥ってしまう。著者は各人が持つその閉じられた世界を”感覚バブル”と呼び、世界は無数の感覚バブルが存在しているようなものと表現する。自分とは違う他人の世界とどう向き合うべきか考えさせられる。2025/10/07
huraki
9
自分が属している世界から旅立った他者あるいは自分自身を描いた短編集。感覚も価値観も異なる相手と、同じ世界で生きていることは、もしかしたら奇跡のようなものかもしれない。離れ離れになったあのとき何を考え、行動していたのか?他者に思いを馳せあるいは理解しようとする行為の優しさと温かさが心に沁みた。2025/10/25
miu
7
はじめてのSF韓国文学。SFは得意ではないのに時々手に取ってしまうのは、地球ではないどこか、にロマンを感じているからかな。7つの短編はどれも“感覚”が研ぎ澄まされていくように澄んだ物語だった。機械との共存や肉体の変化、時空のポケット。この世界からは出ていくけれど。それぞれの物語にそれぞれの答えがあるような。宇宙のように広がりがあって好きだった。2025/10/22
まさ☆( ^ω^ )♬
6
キム・チョヨプ氏の第二短編集。先日読んだ「わたしたちが光の速さで進めないなら」が面白かったので続けて読んだ。SFを舞台として、人と人のコミュニケーションの難しさを描いている物語が多めの印象。もどかしいというか、切ないというか、純粋なるSFとはまた違った面白さがあると感じた。一番好きなのは「最後のライオニ」。「古の協約」「認知空間」「キャビン方程式」辺りも好きな感じだった。他の作品も読んでみたくなった。2025/10/22
ひっさん
6
どの短編も読んだ後は心が震えていた。人と人が通じ合うこと、理解することは難しい。同じ人はいないし、感覚や認識は違うから。だから心が通う瞬間、その刹那が、かけがえなくあまりに美しい。キムチョヨプさんの作品を読むと、心の美しさを垣間見ることができる。社会では価値観の違いに戸惑い、未来を考えると、予測ができないことだらけで不安になる。それでも“物語”がある限り、著者と読者を繋ぎ、私たちを救ってくれる。この読後体験は忘れたくない。設定や発想が全く新鮮で面白かった。各タイトルのイラストもすごく素敵だった。2025/10/02




