出版社内容情報
ノースカロライナ州の湿地で青年の遺体が見つかる。村の人々は「湿地の少女」カイアに疑いの目を向ける。6歳で家族に見捨てられ、人々に蔑まれながらたった一人湿地で生き抜いてきたカイアは果たして犯人なのか
内容説明
ノース・カロライナの湿地で村の青年の死体が発見された。人々は真っ先に“湿地の少女”カイアに疑いの目を向ける。6歳で家族に見捨てられ、生き延びてきたカイア。村の人々に蔑まれながらも、生き物が自然のままに生きる「ザリガニの鳴くところ」へ思いを馳せ暮らしていた彼女は果たして犯人なのか?みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と交差するとき、物語は予想だにしない結末へ。2021年本屋大賞翻訳小説部門1位。
著者等紹介
オーエンズ,ディーリア[オーエンズ,ディーリア] [Owens,Delia]
ジョージア州出身の動物学者、小説家。ジョージア大学で動物学の学士号を、カリフォルニア大学デイヴィス校で動物行動学の博士号を取得。ボツワナのカラハリ砂漠でフィールドワークを行ない、その経験を記したノンフィクション『カラハリが呼んでいる』(マーク・オーエンズとの共著。ハヤカワ文庫刊)が世界的ベストセラーとなる。同書は優れたネイチャーライティングに贈られるジョン・バロウズ賞を受賞している
友廣純[トモヒロジュン]
立教大学大学院文学研究科博士課程中退、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひさか
130
2018年8月刊のWhere the Crawdads Singを翻訳して、2020年3月早川書房刊。2023年12月ハヤカワNV文庫化。面白いタイトルだなぁと気になっていたら、映画化もされていた。手に取ると地味で、ストレートで、少し長くて、たいへんでしたが、ラストのちょっとした(いや、かなりかな)驚きもあって、悪くない読書体験でした。2024/02/16
ま~くん
101
ジャンル不明と聞かされていた愚息推薦本。文学か恋愛モノか。真犯人はお前だ的内容を期待して読了したが、推理小説を読み慣れている方には少し物足りないかも。カイアという沼地近くに長年住む女性が主人公。父はどうしようもない飲んだくれ。母は亭主の暴力に耐え切れず蒸発。兄弟達も絶望して家を出て行く。唯一の救いは幼馴染みとの交流だけ。だがその彼まで自分を残し都会の大学へ進学。悲しみに追いやられたカイアに近づく町の若者。その男が沼近くの櫓から落下して死亡した。事故か他殺か。結末は切なかった。自然観察が好きな方は是非。 2024/05/08
Cinejazz
91
ノ-スカロライナ州の湿地帯で、家族から見捨てられ、ひとり置き去りにされた6歳の少女<カイア>。 ・・・いつか、帰って来てくれるはずの家族を待ち焦がれながら、〝湿地の少女〟と村の人々に蔑まれ、孤独と偏見に耐えながら、生物が自然のままの姿で生きる「ザリガニの鳴くところ」 に思いを寄せ暮らしていた。 ・・・やがて、思春期の少女の夢と希望を無惨に打ち砕いた、村の青年の不審死事件の容疑者となったカイア。 過酷な環境下のカイア、身を焦がす疼痛に耐えるカイア、その凄まじい生きざまに魂を打ちのめされ、感涙に咽び泣く↓2024/05/01
塩崎ツトム
88
世の中には「殺す・殺される」の関係に着陸させなければいけないものだってあるのである。それがわからない人は共同体に守られている人であって、多分、歴史的にはカイアみたいなアウトロー(本人の望む望まないは置いておいて)が世の大半だったのだろうとは思うが、じゃあ、共同体と、それの構成員が牙を剥いてきたときには? 野生と人間の違いは?2024/05/25
ぷらった
86
後書きで驚いたのは,本書は作者が69歳の時に出版されたということです。素晴らしい。男性の不審死から始まります。殺人事件を扱う推理小説や警察・探偵エンタメはあまり好きではありません。しかし読み進めていくうちに,ピュアな題材が多岐にわたり,どんどん引き込まれていきました。湿地帯で生活する貧乏白人,家族に見放されたカイヤの物語です。動物学者の作者の感性で描かれるシーンが印象的です。全く別の物語ですが,小舟シーンが常に登場するのでアーサー・ランサム作の「ツバメ号とアマゾン号」を思い出しました。次作に期待します。2025/01/05