出版社内容情報
燃料が底をつきた航空機のコクピット。ただ一人残されたカルト教団の生き残り。全てが最悪の方向へ転んだ僕の物語を聞いてくれ。
内容説明
上空で燃料が底をつき、エンジンが一基ずつ停止を始めた航空機のコクピット。ただ独り残ったハイジャック犯である僕は、ブラックボックスに自身の半生を物語る。カルト教団で過ごした過去。外の世界での奉仕活動。とある電話を通じて狂い始める日常。集団自殺で崩壊した教団の生き残りとしてメディアから持て囃される狂騒。それら全てが最悪の方向へ転んでしまった人生を―『ファイト・クラブ』を超える傑作カルト小説。
著者等紹介
パラニューク,チャック[パラニューク,チャック] [Palahniuk,Chuck]
1962年2月21日、米ワシントン州パスコ生まれ。オレゴン大学でジャーナリズムを学んだのち、整備士として働きながら1996年に『ファイト・クラブ』を発表。以降も発表される作品すべてがベストセラーを記録している
池田真紀子[イケダマキコ]
上智大学法学部国際関係法学科卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ねりわさび
107
カルト宗教団体の生存者である青年が巻き起こし巻き起こされるカオス的大騒動を描いた青春群像小説。登場するキャラクターたちが極めて個性的で読後も印象に残る。ファイトクラブの原作者なだけあってドラマへの引き込み力は強い。たいへん面白かったですね。2025/06/15
ケンイチミズバ
85
日本にも双子が忌み嫌われる時代があった。このカルト教団では最初にこの世に出てきた子だけが認められる。教団から出て、教団の言う「過酷」な外の世界で生きる若者が自死に至るまでの、死ぬ理由の説明があまりにダラダラ長たらしく文体も嫌い。ただ、自殺方法は斬新で冒頭からの430ページ(ページが逆並び)くらいまでは面白かった。そこから先はウンザリ。誤った電話番号のせいで彼の元に消費し消費される人生に疲れた人たちからの相談が相次ぐが、そもそも厭世的な彼の身にのしかかる出来事としてはあまりにブラック。おススメ度は低いです。2023/05/10
Vakira
49
本という書物の可能性に挑戦。443ページから物語は始まる。初っ端から驚かされる。自殺の時限爆弾。約7時間後に語り手は死ぬ事になる。ハイジャックした飛行機の燃料がなくなるからだ。乗客全員離陸時に降し、パイロットは飛行中、パラシュートを持ってドアからダイブ。飛行機の中には自分一人しかいないのだ。主人公はボイスレコーダーに向かって自殺への告白を始めると言った話。それでは、ページを捲る毎に近づく、死のカウントダウンと、行きましょうや。読み始めるやいなや、テリー・ギリアムの名作映画「フィッシャー・キング」が蘇る。2023/07/09
泰然
44
カルト教団という異常閉塞社会の最後の生存者が見た外の資本主義世界は同じく常規を逸し、自分の意志と無関係に進む。ファイトクラブと同じく消費社会と存在証明をなくした人間を哄笑し、卑猥な文言や自己破壊的行動で、読書の怠惰な精神力を挑発する。終焉へのハイジャック、引用される聖書の節、過去から予測投資する商業主義の不穏と主人公を支配するディレクターと謎の女の行動は本作の不気味さや預言書感を近未来ディストピアSFの如く感じさせる。厭世の成れの果てになるか、世界のシステムに抵らって孤高と錯乱に生きるかを突き付ける怪作。2022/03/14
Kepeta
32
初パラニューク。訳が良くテンダーの諧謔的な一人称がリズム感があり、思いの外読みやすかった。 アメリカ現代文学って本当に何を書いてもキリスト教の話になりますが、本書は宗教のパロディというよりも、旧約聖書を現代に読み換えた「イエスの父ヨセフの話」だと思えました。ファーティリティは全知全能の神でありイエスの母マリアであり。宗教であれビジネスであれ、この世は所詮洗脳とマーケティングと盲信で支えられる。パラニュークのこの世に対する視線は徹底してドライだが、諦観の底にある穏やかな優しさも感じられる。これは要再読。2024/06/17




