出版社内容情報
1954年、イギリスの名門パブリック・スクールで起こる怪奇事件の数々。そこには、対照的な二人の少年の出会いがあった……
内容説明
1954年、イギリスの名門パブリック・スクールで学ぶ14歳の気弱な少年ジョナサンは、同級生ばかりか教師にまでいじめられ、つらい日々を送っていた。しかしある時から、クラスで一目置かれる一匹狼のリチャードと仲良くなる。二人が親密になるにつれ、ジョナサンをいじめる悪童グループの仲間が一人、また一人と不可解な事件や事故に巻き込まれていく…彼らにいったい何が?少年たちの歪んだ心を巧みに描いた幻の傑作。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
naoっぴ
87
面白かった!イギリス名門パブリックスクールを舞台に繰り広げられるオカルトミステリー。寮生活という閉鎖された場所の、青く歪な心理や、徐々に明かされる主要人物たちの過去に目が離せなかった。依存と執着、独占と束縛。心理描写が丁寧で、人が巧妙に追い詰められていく状況にドキドキ。「ずっと友達でいろよ。そしたら絶対に君を憎んだりはしないよ」この狂気が恐ろしい。リチャードは何を操ったのか。復刊も納得の傑作だった。2018/08/16
扉のこちら側
83
2016年331冊め。初読は単行本で2004年頃。何度読んでも圧倒されるこの怒涛の展開。邦訳が出版された2000年頃は酒鬼薔薇事件等の少年犯罪が取りざたされていたが、そういう大きな事件とは違う、日常がいつの間にか一線を超えてしまったことに気づく恐怖。タイトルにもある通り、パブリックスクールでも降霊術が契機となる話なのだが、絡み合う登場人物たちの秘密にも驚かされる。文庫デザインもよいけれど、雰囲気的には単行本のデザインの方がより妖しさが出ていたと思う。G1000入りしててもいいのにな。2016/05/16
本木英朗
67
社会の最小単位を成す「一対一」という関係性が持ち得るいびつさ。その生々しさは、二人の少年が互いに抱く幼稚で純粋な承認の要求によりむき出しにされる。彼らは鏡となり、周囲の人間たちのゆがんだ姿も映しだす。その鏡像に耐え切れない人間たちは徐々に追い詰められていく。やがて中心にいる二人の少年にもその鏡像は映し出され、全てが破滅の道へと辿っていく。悲劇的な結末は冒頭から暗示されていたが、ここまで救いのない話だとは思わなかった。舞台設定と人物描写の妙が、抜け出せない心の迷宮を彷徨う恐怖を克明に描く、青春ホラーの秀作。2016/08/18
HANA
66
英国の寄宿舎を舞台とした二人の少年の物語。寄宿舎での少年の関係というと何故か『ポーの一族』や恩田陸の甘酸っぱい背徳感を思い起こさせるのだが、二人の危うい関係という点では『僕はお城の多さまだ』を連想させられた。二人の関係も友情だけには留まらず物語が進むにつれ様々なものがそこには含まれて来て、それが気になって一気に読ませられる。彼らの周囲にある人間関係も然り。どんどんと影の部分が明らかになってきて。題名にもなっている霊応ゲームだ、そこで何があったかは明らかにされていないが、それを暗示させる部分が実に恐ろしい。2015/07/15
藤月はな(灯れ松明の火)
60
再読。長いこと、復刊が望まれていた作品が復活。かつて読友さんの「リチャードは三大ヤンデレの一人」発言からコメントを交わし合ったのが懐かしい(笑)でもこの物語は私にとって精神的に参っている時には憎み、呪って一瞬でも強烈に死を願っていた頃の感情に溺れそうになる物語でもある。もし、一瞬でもロクビーが自分の弱さに目を向けていたらあのような悲劇は回避できたかもしれないと思うとより、悲愴だ。それでも転がる石は様々な者の悪感情の隙を巻き込みながら破滅へと向かうしかなかった。逝った者も辛く、残された者も辛く、希望がない。2015/09/02