ハヤカワ文庫 誰よりも狙われた男

ル・カレ，ジョン【著】〈ｌｅ Ｃａｒｒ´ｅ，Ｊｏｈｎ〉/加賀山 卓朗【訳】

早川書房（2014/09発売）

• サイズ 文庫判／ページ数 486p／高さ 16cm
• 商品コード 9784150413149
• NDC分類 933
• Cコード C0197

出版社内容情報

密入国した青年を追う練達のスパイ。そして女性弁護士と銀行家は、非情な世界へと巻きこまれてゆく。スパイ小説の巨匠が描く苛烈な諜報戦！

内容説明

ドイツのハンブルクにやって来た痩せすぎの若者イッサ。体じゅうに傷跡があり、密入国していた彼を救おうと、弁護士のアナベルは銀行経営者ブルーに接触する。だが、イッサは過激派として国際指名手配されていたのだ。練達のスパイ、バッハマンの率いるチームが、イッサに迫る。そして、命懸けでイッサを救おうとするアナベルと、彼女に魅かれるブルーは、暗闘に巻きこまれていく…スパイ小説の巨匠が描く苛烈な諜報戦。

著者等紹介

ル・カレ，ジョン［ルカレ，ジョン］ ［ｌｅ　Ｃａｒｒ´ｅ，Ｊｏｈｎ］
１９３１年イギリスのドーセツト州生まれ。オックスフォード大学卒業後、イートン校で教鞭をとる。その後、英国情報部の一員となり、旧西ドイツのボンにイギリス大使館の二等書記官として赴任。さらにハンブルクで領事を務めた。１９６１年『死者にかかってきた電話』で小説家デビュー。１９６３年の『寒い国から帰ってきたスパイ』でアメリカ探偵作家クラブ（ＭＷＡ）賞最優秀長篇賞と英国推理作家協会（ＣＷＡ）賞ゴールド・ダガー賞を受賞した。『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』（１９７４年）、『スクールボーイ閣下』（１９７７年・ＣＷＡ賞ゴールド・ダガー賞受賞）、『スマイリーと仲間たち』（１９７９年）の三部作はスパイ小説の傑作と評されている

加賀山卓朗［カガヤマタクロウ］
１９６２年生、東京大学法学部卒、英米文学翻訳家（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

[Tetchy]

舞台は奇しくも彼のデビュー作同様にドイツ。ハンブルグまで亡命してきたイッサという青年を巡るドイツ連邦と一介のプライベート・バンクの経営者と亡命者保護を専門とする女性弁護士との闘いを描く。このイッサ・カルポフという人物造形に世界で起きた様々な国際問題を象徴化して注ぎ込まれている。刊行当時の2008年の国際情勢を1つに凝縮したような存在であるのだが、なんとあとがきを読むと実在するモデルとなる人物がいるとあったから驚きだ。何とも空虚感漂う結末で本書の題名の真の意味が立ち上るのはさすがはル・カレと褒めるべきか。

2024/06/18

[k5]

ル・カレとは思えないくらい映像描写が多くて、途中までむっちゃわかりやすかったのですが、途中からマネロンの話が入り組んできてこんがらがります。ブルーにしろアナベルにしろ、エモめのキャラクターに感情移入しても筋が追いきれない、そんなこんがらがることの快感まで含めてのル・カレという気がしてきました。そして迷わず1ページ目から再読はじめる私。映画も観ます。

2024/03/16

[k5]

フィリップ・シーモア・ホフマンの名演技に酔いしれる映画を観たからか、一読目には巻き込まれ型主人公アナベルやブルーの視点を強く感じたものが、大胆なスパイバッハマン寄りになった二周目でした。思えば、前者が脆くも大切な家族の絆を背負っているのに対し、バッハマンは国家の正義の危うさを、皮肉な目線で見つつも当事者として体現しているところが魅力です。バッハマン演説のイスラエルに関する部分は今年書かれたのではないか、と思えるほどの鮮烈さです。ぜひご一読を。

2024/03/28

[スー]

110中盤まで話がなかなか見えないのとあまりにも淡々としているのでまったく読み進めず大苦戦。そういえば映画があったな!と思い立って映画を観たら頭の中でしっかり整理できてやっと話が見えてきて後半はすんなり読めました。この人物がどう話に繋がるのか?これをやってどうするのか?大物を釣るために地道に一歩一歩積み重ねてやってるのがたぶん事実に近いのだろうと思えた。それにしてもアメリカはやりたい放題だな

2022/12/18

[わたなべよしお]

　ル・カレにしては読みやすい本だった。ずっと、読み続けているが、特に近年は、読み終えた瞬間に空しい気持ちになる。あまりにも非情な現実を最後に突きつけるからだ。この本もそうだった。作品自体はさすがともいえるもので、人々の思惑、微妙な心理的陰影が独特の世界を作っている。ああ、また空しく、悲しい気持になるのだろうと、分かっていても次作も読んでしまうのだろう。

2014/10/20