内容説明
元スポーツ選手の牧師、刑事とその妻、会社の副社長一家、ダンサー、銀行員などなど職業も年齢もさまざまなグループ。彼らは時に反目し合い、時に協力し合って上部を目指す。しかし、破壊された船内での脱出路の確保は困難を極めた。鳴動を繰り返す船が沈没しないという保証はない。そもそも救助隊は本当に来るのか…生存者が抱えるそれぞれの人生、襲いかかる運命の明暗。極限状態で繰り広げられる感動の人間ドラマ。
著者等紹介
高津幸枝[タカツユキエ]
国際基督教大学教養学部社会科学科卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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セウテス
61
新訳版下巻。映画では助かろうと努力する者たちの為に、次の道を開く為に、尊い犠牲は生まれてしまう。それでも人の命を救えた事に、人生の終焉は安らかである。そして苦難を乗り越えて助かった者たちにだけ、暖かな光がさすのだ。しかし本作は違う、苦労して助かった彼らの前に、別のルートで比較的簡単に助かったグループが存在する。また助かった後にも幾つかのしこりが残こり、我々の苦労は何だったのか、牧師の独りよがりだったのでは、という繊細な心理の描写になる。この世界は不条理である、しかしそれを踏まえて前に進むべきだと言う事か。2017/09/18
NAO
54
狂信的な牧師をリーダーとした脱出劇。だが、作者はそのやり方が正しかったのかどうかの判断は下していない。牧師についてが彼のやり方に違和感を感じている者も多い。そしてなんと、救出されたあとで他にも生存者がいることを知って彼らが愕然とする場面が描かれる。必死の脱出行を描いておきながら、最後に、彼ら以外にも救出者がいると描いたギャリコの真意は何だったのか。それでも、何もしないでいるより行動し極限状態を越えてくることで人は新しい視野を手に入れるということは、間違いない。 2024/08/01
TSUBASA
16
水に浸かった部屋を抜けて地獄の機関室を登り、天井にある船底を目指す一行。その間で各人のエゴや諦念、嫉妬が渦巻く。良く言えば人間描写が細かいけども、登場人物が多くてキャラは被ってるし、みんなあーだこーだ文句を言って身勝手なのでテンポが悪い。絶体絶命の状態でパニックになるのはわかるけどみんな座して死を待ちたいもんかね?また、地球上で唯一理に適った形で実現できる逆さまの世界というのが転覆した船だと思うんだけど、文章としてはわかりにくい。やはりそれらをうまく見せた72年の映画は傑作だったのだと実感する。2020/08/15
ryuetto
7
これは素晴らしかった! 文句なく、非常に面白かった。特に、ラストの落ちが秀逸。 ああ、でも、人間って、そういうものかもしれないなと、人の運命ってそういうものかもしれないな、と、世の中の残酷さと理不尽さを、容赦なく突き付けてきたところに感動しました。 人の世の容赦なさをこれでもかと突き付けて、それでも生きていかなきゃならない我々は、今までどんなに守られた場所にいたのかと、スーザンと一緒に思い知らなければならない。そういうところがよかったと思います。傑作でした。2019/07/07
topo
4
傑作海洋パニック映画の原作。 映画がアクションメインでサブとして群像劇に対し、原作は群像劇メインでアクションがサブなのがより面白い。 極限状態下での人間ドラマがより生々しく描かれ、個性溢れる脱出組各人の仔細な心理描写との相乗効果で読み応え抜群。 映画(1972年)とは全然違うラストに驚いた。あの登場人物が!?って。原作と映画でラストが違うと悶々することがあるけど本作はどちらも素晴らしい。深みがあるのは原作かもだけど、映画も好き。 2006年版は、あれはあれで面白いけど人物設定は原作に忠実でいてほしかったな2022/05/30
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