内容説明
KGB上層部に潜むCIAの二重スパイ“パンドラ”―その正体を暴露する鍵となる文書の存在が、ソ連側に発覚した。直ちにKGBは行動を開始するが、思わぬことから文書はフランス人の娘シルヴィーの手に。彼女がKGBの魔手から逃れる術はなかった―折りしも出会ったジェームズなる男の助けなしには。だが、この邂逅こそ、CIAとKGBとの凄絶なる暗闘の序曲だった!非情な作戦が交錯するスパイ小説の最高傑作。
著者等紹介
バー=ゾウハー,マイケル[バーゾウハー,マイケル][Bar‐Zohar,Michael]
1938年ブルガリア生まれ。ナチスの迫害を逃れてイスラエルに移住。ヘブライ大学卒業後、パリ大学で博士号を取得し、新聞社の特派員となる。1967年、イスラエル国防省の報道官を務め、同年の六日間戦争と73年の第四次中東戦争に従軍。その後、ハイファ大学で教鞭をとり、国会議員にもなった
広瀬順弘[ヒロセマサヒロ]
1932年生、青山学院大学英文科卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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absinthe
177
スパイの世界は嘘に嘘を塗り固めたものだった。ちょっと出来すぎた話ではある。あっと言わせるオチは個気味よく面白いが、爽快感とは違ったものだった。ル・カレ等のリアル路線に比べて大味でアクションに重きが置かれたよう。歴史文書と向かい合う姿など、後のダン・ブラウンを先取りしたような感じもあり。東西冷戦の真っただ中の味方すらも信じられないスパイの世界が楽しく読める。ミグ25亡命事件が実はこの作戦の一環だったとかなかったとか。それは読んでのお愉しみ。2021/09/22
藤月はな(灯れ松明の火)
30
冷戦真っ只中の時代、ある秘密が記された文書が青年によって持ち出され、文章を巡るKGBとCIAの非情なる争奪戦が起こる。何度も陥る絶体絶命の危機(とはいえ、最後の絶体絶命はシルヴィーの警戒不足によるものですが)とそれによって深まるロマンス、裏切り者は一体、誰だ。しかし、最後は「そんな!?」と思ってしまった感が否めませんが・・・(・_・;)2013/11/15
マムみかん(*ほぼ一言感想*)
22
やはりスパイ小説や冒険サスペンスの舞台は、東西冷戦時代がしっくりくるな~と再確認しちゃうようなストーリーでしたね♪ 非情で残酷な謀略戦に巻き込まれた主人公たちの運命は…裏切者は誰なのか…コンゲームの次の一手は何なのか…とドキドキしながらページをめくりました。 とても面白かったのですが、正直言って、ラストのまとめ方は少々拍子抜けします(笑)。 そう言えば、ミグ25の函館亡命事件なんてものもあったな~と懐かしく思い出しました☆2013/11/16
鐵太郎
17
巻き込まれた主人公というか道化役となるのは、複雑な過去を持つフランス人の美女と、複雑な過去を持つCIAの工作員の青年。お話自体は絵に描いたようなスリルとサスペンス。どんでん返しのあとのどんでん返し、はたして真の犯人は誰か。本当の反逆者とは誰か。最後の鍵となるのは、「ブレダーチェリ」というロシア語。読んでいて楽しい1980年代のスパイ小説です。2006/05/29
Tetchy
10
エスピオナージュでありながらも本格ミステリ張りのサプライズを提供するバー=ゾウハー。今回もやってくれた。真相が判明した後に今まで書かれていた内容の意味が全く別の側面を持っていた事が解る。上手い、実に上手い。しかし本格ミステリをこよなく愛する読者ならば、本書の仕掛けに対し、抵抗感を示すかもしれない。本作を読むにはある程度この手の作品に馴染んでおくのが良いのかもしれない。非常に淀みなく、あれよあれよという間に次々とサプライズが展開していき、本から伸びた手に引っ張られるかの如く、ぐいぐい読み進まされていく。2010/04/25