内容説明
ふとしたことから昔の秘密を妻と打ち明け合うことになった医師フリドリン。気まずさを感じつつ、彼は往診のため夜のウィーンへ出るが、そこで様々な出来事に遭遇する。さらに、偶然出会った友人と奇妙な仮面舞踏会に行くことになるが…スタンリー・キューブリック監督の遺作『アイズ・ワイド・シャット』の原点となった「夢がたり」をはじめ、人妻との悲恋を描く「ある別れ」など全五篇を収める憂愁と官能の傑作小説集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
メルコ
4
キューブリックの映画「アイズ・ワイド・シャット」の元になった中編を含む5編の中短編集。どれも儚い記憶と官能的な想像を喚起させる。夢と現実の境があやふやであったり、深層心理を探るような描写が特徴的。掴みどころがなくて印象もぼやけてしまうが、人間の行動や心理を幻想的に描いているところは不思議な味わいがある。2017/09/07
槙
4
世紀末のウィーンを代表する作家の短編集。スタンリー・キューブリック監督の遺作「アイズ・ワイド・シャット」の原作である表題作の「夢がたり」のぼんやりとした薄暗い不安。同時代のウィーンの画家エゴン・シーレの絵みたいだ。大学でウィーンの都市文化の授業をとってからずっと気になってたので、なんだか宿題をやっと終わらせたような気分になっている。2015/11/14
uburoi
1
キューブリックが『アイズワイドシャット』を残して他界した時に各出版社がこぞってこの原作の翻訳を文庫で出した。もともと岩波には「夢小説」として出ていて、わたしは当時角川と文春を読み、早川が今になってしまった。岩波はいまだに本棚に眠っている。早川版は映画原作と合わせて中編1と短編3を合わせて編纂して誠に良心的だ。中編「フロイライン・エルゼ」が女性版町田康といっていいような死の直前の錯乱のモノローグ。父親の賭博の借金を都合してもらうために年寄りの子爵の誘惑に揺れ動くこころのエロス的たゆたいを描き切った。2017/09/06
猫風船
0
いまひとつ好みではない...