内容説明
ニューヨーク郊外に豪邸を構える実業家のファーザー。しがない影絵師から映画王にのしあがるユダヤ系移民のターテ。人種偏見に憤り、テロリストに変貌する黒人ピアニスト、コールハウス。それぞれの人生を必死に生きる彼らとその家族を中心に、自動車王フォード、魔術師フーディニ、アナーキストのエマ・ゴールドマンら実在の人物を絡めて壮大華麗な物語を織り上げる。今世紀初頭の躍動期のアメリカを浮き彫りにする傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひほ
18
予習&復習終了。人種差別問題は難しいですね。2023/09/26
おおた
15
今年7月に亡くなった作者の代表作は、絶版になってるのがもったいない名作。1900年代初頭の希望にあふれたアメリカを舞台に、あるブルジョワ家庭の静かな崩壊を描く。魔術師フーディニや自動車王ヘンリー・フォードなど実在の人物が顔を出しつつ、中心に据えられるのは黒人がまだ人権を持たない時代に、白人が抱く「常識」だ。北極探検や映画の発明などアメリカの発展を担う技術革新が行われながらも、1865年に事実上奴隷制が撤廃されてから50年もたっていない時代の人々の心持ちというのはそう簡単に変わっていないのだと思い知る。2015/08/15
真琴
7
★★★★☆ 白人実業家のファーザー、切り絵師から映画王となるユダヤ系移民のターテ、人種偏見に憤りテロリストに変貌する黒人ピアニストのコールハウス。この3人(の家族)を中心に20世紀初頭のアメリカの人種問題が描かれる。本作を原作とした舞台を見て手にとりました。(絶版になっているのが勿体無い作品)アメリカンドリームを手にしたターテの、娘に王女様のような服装をさせるのは過去を忘れさせたいという思いは切なかった。日本にいては気付けないと思っていた人種問題や移民問題も、今の日本の格差社会に通ずるところがあるのかな。2023/10/03
Mark.jr
3
実業家のファーザー、ユダヤ系移民のターテ。さらに、あの魔術王フーディニや、アナーキストのEmma Goldmanなど、空想の人物と実在の人物が入り交じる群像劇です。ずれたリズムを意味するタイトル通り、多数の登場人物のシーンをカットアップ、ぶつ切りにして繋いだかのような書き方が印象的で、それがニューヨークという雑多な都市の、または名もなき多くの人からなる歴史の表現になっていると思います。2019/11/25
立ち待ち月
1
ラグタイムを知らなかったので検索してみたけど、ジャズの原点になった音楽の一つだそうです。有名な曲はけっこう聞き覚えが。中には映画「スティング」で使われていた曲もありました。 人というよりは、ラグタイムの流れていた時代そのものを描いたような作品。その時代を象徴するような属性をそのまま名前に冠した固有名詞を持たない主人公たちと、おそらく当時の有名人たちが軽やかに入り混じる。 Scott JoplinをBGMとして流しながら読んでいると、白黒の映画を見ているような気分になります。 2023/07/10