内容説明
パリ、ワルシャワ、ジュネーヴ。ヨーロッパの国際都市を舞台に、三つの色が奏でる三つの愛の物語―愛する夫と娘を車の事故で失ったジュリーは、すべてがブルーな色合いの中で自己を回復できるのか。雪のように白い肌のドミニクは、ポーランド人の夫の愛がもの足りず離婚裁判に持ち込むが…。優しい赤がよく似合うモデルのヴァランティーヌは、盗聴マニアの元判事に魅かれてゆく…ユニークな構成で贈る連作小説集。
目次
青の愛―ジュリーの自由
白の愛―ドミニクとカロル
赤の愛―愛へ向かうヴァランティーヌ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
takaichiro
100
約2カ月半本に手の届かない時を過ごした。こんなに長く読書できないなんて。読書生活の再開はフランス文学大人の愛の三部作、トリコロール。なぜこの本を手にしたか。無意識。本書の最後に「人はあらゆる可能性の中から無意識のうちにたった一つの可能性を選びとる。その連続がいつか人生を収斂させ一つの必然、運命を産み落とす」を見つけた。どうもこの文書に辿り着くことが宿命だったようだ。大袈裟である事は承知。久々の読書で感受性が高まっている。本との出会いは人との出会いに匹敵する。読書生活に戻れた事に感謝!2019/12/19
Ribes triste
15
映画3部作の雰囲気が好きだったので、文章にしたらそれが壊れてしまうと思っていた。しかし、読んでみれば散文詩のような雰囲気の小説で、映像とは違う美しい世界がありました。読んでよかった。一筋縄ではいかないキェシロフスキの世界が私は好きです。2020/11/09
akane
1
昔見た映画の筋を思い出すために手に取った。青、白、赤の表現はやはり視覚的効果の高い映画の方がもちろん優れているが、小説を読んで映画をさらに見直せば、全く違う感覚で鑑賞できるような気がする。3つの愛の物語には、心に傷を持つ人たちが登場する。憎しみや恨めしさ、嫌悪など負の感情を、赦し、寛容、穏やかな愛へと昇華させていく。そんな彼らの心の変遷を、とても自然な筆致で静かに描いている。読み終わったら本は処分しようと考えていたが、ずっと手元において、年数がたてばまた読み返してみたいと思う。2014/08/22
アレカヤシ
0
三つの物語の愛は愛というより、恋とか、執着みたいな感じで、とても肉体的。青に引用されているコリントの信徒の手紙13章の愛があまりに素晴らしいので、映画を見た時も何だか腑に落ちなかった。けれど本書を読んで、監督の意図がわかったような気がした。人間はどうしても愛に到達することは出来ない。愛は理想である。理想は実現することが出来ないから理想である。だけど到達できないと諦めるのではなく生の最後まで理想に向かって生きたい。この愛の理想に向かって生きるという事をこの物語後の三組のカップルに託したのではないかと思った。2017/04/12
馬場貴生
0
セリフの言い回しなどは映画の雰囲気が出ていて良かったものの、小説表現がそれを相殺してしまっていた感がある。それでも内容はなかなか興味深いもので、個人的には「白の愛」のカロルの変態性や、「赤の愛」の元判事の盗聴趣味など、やはり変態性が物語の主題を突いていて良かった。2013/10/29