内容説明
霧の中、沼地の方から馬車が来る。少し遠ざかったかと思うと、水が引き、吸いこまれ、渦まく奇妙な音、続いてうろたえた馬のいななき、そして子どもの泣きさけぶ声。―孤立した〈うなぎ沼の館〉で、亡くなった老夫人の遺産整理をしていた弁護士キップスを襲った真夜中の怪奇!そして夫人の葬儀に現われた不気味な黒衣の女の正体とは?過去を秘めた辺地の館にじわじわとしのび寄る恐怖を、イギリス沼沢地方独特の雰囲気をバックに描きあげる正統派ホラーの真髄!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mii22.
55
怖かった!静かで、陰うつで、物淋しい、イギリス沼沢地方独特の雰囲気を静謐かつ細密に再現する文章。そこに表れる不気味な黒衣の女。霧のたちこめる暗闇の沼地から聞こえてくる馬車の駆ける音..恐怖の叫び..若き弁護士キップスを襲った恐ろしい出来事を読み手はじわじわと恐怖を味わいながら頁をめくる。これは、この夏私が求めていた怖い物語だった。とても良かった。2016/08/29
Yu。
24
静かに、そして確実に。。。全てはここへ行き着く為に残された最後のピースを嵌めた途端にこもった恐怖がスパークする古き良きゴシック系怪奇ストーリー。米国的な血生臭さや派手さを一切排除した、ゆっくりじっくりな情景描写に浸れる古典風怪奇譚を好む方にはニンマリさせる内容かと。個人的にこれは大切本の仲間入り(๑•᎑•๑)2015/11/10
藤月はな(灯れ松明の火)
19
とある老婦人の生前物の処理をしにやってきた若き日の主人公に現れた黒衣の女。しかし、周囲の人は彼女を見た者はいなく、そのことを話すと誰もが顔を強張らせ、口を噤む。やがて起こる過去の反復現象とそれに対する黒衣の女の終わりなき嘆きと世の理不尽さへの憎悪。犬が罠に掛けられて死にそうになった場面が本当に怖かったです。そして黒衣の女の出現の意味と関与する終わりがその理不尽さをより一層、募らせています。この作品の一人芝居は逆にそこに「怪異」はいると体感できそうなので観てみたいような、観てみたくないような・・・・。2012/10/09
桜子
10
不吉な予兆を秘めたロンドンの濃霧からはじまる情景描写が巧み。眼前に鬱々と広がる沼沢地。うなぎ沼の館へ至る荒涼とした道程に焦らされながらも、徐々に霊妙なゴシックへの期待感が高まる。館に染みついた悲劇。黒衣の女の悲嘆と青年アーサーの苦痛が混淆し、浄化されない想いが尾を引いた。2012/08/21
アヤネ
9
霧の中、沼地の方から馬車が来る。少し遠ざかったかと思うと、水が引き、吸いこまれ、渦まく奇妙な音、続いてうろたえた馬のいななき、そして子どもの泣きさけぶ声。―孤立した〈うなぎ沼の館〉で、亡くなった老夫人の遺産整理をしていた弁護士キップスを襲った真夜中の怪奇!(Amazon)。。。滅多に読まないホラーに挑戦。怖くて怖くて夜に読めなかったよ。でも面白かった(^_^;)2017/05/04