感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
absinthe
183
『鷲は舞い降りた』とも並ぶヒギンズの名作で、『鷲は…』よりもこちらを高く評価する読者も多いという。渋い。そしてカッコイイ。善ばかりでない登場人物たち。だが、悪役も筋が通っており、完全な悪でもない。とにかく登場人物たちの存在感が半端でないのだ。結末まで気を抜くことが出来ない名作。
buchipanda3
112
元IRAの中尉で追われ者のファロン、曰く付きの過去があるカトリックのダコスタ神父、そして冷酷な裏街の元締めミーアン。三者三様の暗部を持つ男たちの相容れない衝突を描いたノワール・エンタメ小説。下手な装飾など余計なものは一切なし、平易ながら容赦のない描写にがっつり掴まれた。緊張感というより、ひたすら物憂いな空気感が物語を包み続ける。それでも人物の背景にある重みがセリフひとつひとつに情感として滲み出てきて、彼らの結末を追わずにいられなかった。過去を贖い、自身と向き合う。その祈りの思いの強さを最後まで見届けた。2020/11/28
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
112
久し振りに手にしたジャック・ヒギンズ。いやー、良かった。ハヤカワのアンケートでは作者が一番好きな作品だというが、それも納得。「鷲は舞い降りた」ほどの圧倒的なスケール感はないが、非常に良くできた佳作である。元IRAの天才的な銃の使い手ファロン、彼の殺しを偶然知ることになる神父と盲目の美少女。依頼主のマフィアから彼らを守るために、ファロンの孤独な闘いが続く。ガンファイトあり、アクションあり、キャラの造形などは古典的なのだけれど、これぞハードボイルド。心に沁みます。堪能しました。五つ星です!★★★★★2014/01/25
はつばあば
67
きゃりさんの素晴らしい感想で横文字作家さんながら手にした。これほど地味で美しく哀しいハードボイルドは無い。雨は人の罪を洗い流してくれたのか。日本では「神も仏も無い」と云うが、神は死を与える前にファロンをダコタス神父やアンナの前に遣わせたのか。悪役であるはずのミーアンにさえ死化粧を施す姿に「良い奴かも・・」と思わせる。クリスマスにバッハの曲を聴きながらもう一度再読したいと思う。そして感想など無粋な事を考えずにこの世界に浸りたい2015/11/25
goro@一箱古本市5/5
66
再読了。やっぱりヒギンズ。暗い過去を背負う男ファロンは逃亡する為に殺しを請け負うが、現場を司祭に見られてしまう。ある理由によりダコスタ神父は証言出来ない。ジレンマに陥りながらもファロンへ情が移ってしまう。盲目のアンナ、娼婦のジェニーと対極のような女性を置いてファロンに絡ませる。優しく過去から逃れられないファロンが決着をつける時が来た!全編愛おしい物語。昔の単純なB給油映画みたいだけどそれがカッコいいわぁ〜。手放せない本です。またいつか。2019/07/24