感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
67
論文を認められたことで権威も名誉も手に入れたハーツォグ。ハンサムで女性にもてるハーツォグ。なのに、彼にはどこにも居場所がない。だからこそ、彼は、手紙を書きつづけて自分の居場所を見つけ出そうとする。その彼の手紙は、彼自身だけでなく当時のアメリカ社会の問題点をも、くっきりと浮かび上がらせている。そして、書くことは自分の異常性を明らかにすることにしかならないのに、それでも書かずにいられないところに、ハーツォグの苦悩がある。自己再生は、内省ではなく、自然の中で身を任せることだというのも、なかなか意味深だ。2019/01/04
扉のこちら側
59
初読。2015年1023冊め。【50-2/G1000】小説らしい事件は下巻の後半にようやく発生するだけで、上巻同様にほとんどが精神錯乱状態にある主人公ハーツォグの独白。亡き母や別れた妻達、ニーチェやハイデガー等の著名人へ当てた手紙は、「不毛の思想への憤りをこめた抗議(訳者あとがきより)」。最後は冒頭と同じ場所に戻るが、彼の心ははたして。2015/08/28




